ネット広告のアドウェイズがECデータ事業の専門会社Nint(ニント、東京・新宿)を分社化し、2018年4月20日に事業を本格的に開始したことが分かった。購買データ分析は小売り店の販売額を集計したPOSデータが現在の主流だが、EC市場の拡大に伴い新たなデータが求められている。そうしたニーズに応える。

ECデータ事業の専門会社Nintを立ち上げるアドウェイズのオフィス
ECデータ事業の専門会社Nintを立ち上げるアドウェイズのオフィス

 アドウェイズのECデータ事業「Nint」は、日本と中国のECモールで本来は非公開の商品別の販売額を推定し、ECモール出店者やメーカー向けに提供する。ネスレ日本、貝印、ジェトロ(日本貿易振興機構)など3万社以上の利用企業を獲得してきた。利用企業は、競合の商品別売り上げや広告施策の分析などに活用している。同社はECデータ事業を2009年に中国で立ち上げ、現在でも日本と中国で前年比30%超のペースで急成長を続けているとみられる。

 同事業の成長を加速させるために分社化に踏み切った。Nintはアドウェイズの関連会社である香港のアドウェイズテクノロジーの子会社とする。中国市場へは、上海に本社を置く愛徳威信息科技(インフォーテック)有限公司を通じて提供する。

 Nintでは日本、中国のECモールの情報を収集するため、1日当たり2億~3億ページの情報をクローリング。販売数、ランキング、価格などのデータがすべて公開されている中国のECモールで、商品別の販売額の予測モデルを作成した。その予測モデルを使い、日本の楽天市場などのECモールの商品別の販売額を、ランキング順位などから推測している。推定した販売額が、実際の額の上下10%以内に収まる確率は9割に達しているという。

データ処理業務を効率化

 Nintの代表となるアドウェイズ執行役員データ事業担当の蘇迭氏は、「もっとデータ事業に集中して、成長のスピードを加速させ、規模感を拡大したい」と分社化の狙いを語る。

 注力する分野の1つはデータ処理の技術開発。さまざまなECモールで似たような名前、キャッチコピーで販売されている商品が、同じ商品であるかどうかをテキストや画像から識別する技術の精度を高めていく。一部人手をかけている業務を効率化していく。

 現在のサービス提供価格は上げずに提供するサービスを向上させて、顧客層を拡大していきたい考えだ。なお、現在の価格はメーカー向けは年間300万~400万円、店舗向けは年間50万円程度となる。

 もう1つ注力するのは、大量のデータからEC担当者が注視すべきデータを自動的にピックアップするソリューションの開発。蘇氏は、「例えば粉ミルク1つとっても分析すべき市場は1つではない。販売プラットフォーム別、価格帯別などさまざまな切り口から市場を定義すると1万ぐらいのセグメントになり、その中で自社製品が勝っている、負けていると探していくのは大変だ」と語る。

 ディープラーニングをはじめとするAI技術を活用して、サービスを高度化していく。

 ECデータ事業に携わる社員は現在、研究開発を進める中国では150人、営業とマーケティングを展開する日本は5人の規模。これを2~3年後には中国で200人、日本は15~20人規模まで拡大する方針だ。

 Nintでは現在、中国のECモールの約90%、日本のECモールの約50%をカバーしている。19年には米アマゾン・ドット・コムの販売額も推定するモデルを開発する。「現在は全世界で35%のカバレッジだが、アマゾンにより半分まで増えるだろう」と蘇氏は語る。米国でのデータ事業展開も視野に入れる。「売り上げは毎年自然に増えていく。それより自由にチャレンジをしていいサービスを提供したい」と成長に自信を見せる。

Nintの分析画面
Nintの分析画面