毎年注目度が上がっているイベント「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」。映画や音楽、インタラクティブなどをテーマに、米テキサス州オースティンで開かれるSXSWは、技術やカルチャーのトレンドを知るためには絶好の場所だ。パナソニックやソニーも出展し、イノベーションへつながる「何か」を探している。※前編はパナソニック、後編はソニーを中心にレポートします。

2018年3月9日~18日まで、米テキサス州オースティン市でSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)が開催された。インタラクティブ(コンピューター技術を利用したマーケティング、サービス、デザイン、医療など)や映画、音楽、コンバージェンス(政府、スポーツ、フード、ソーシャルなど)、教育といったテーマで、世界の先進企業から注目されている巨大イベントだ。
日本からはパナソニックやソニーなどが出展した。SXSWが話題を集めるのは、他のコンベンションには見られないユニークさにある。
例えば、特定の会場で開催されるだけでなく、期間中は周辺でも多くの関連イベントがあり、市内がSXSWで埋め尽くされるほどだ。メイン会場はオースティンのコンベンションセンターだが、ホテルやレストラン、公園なども大小イベント会場となり、各業界の専門家が集結してセッションや展示会が開かれる。文字通り、町を挙げてのお祭りといった様子で、通常のコンベンションのような単一の環境でないところが、出展側にとっては腕の見せどころであり、来場者にはバラエティーに富んだ会場を訪れる楽しみにつながっている。
もう1つの特徴は、技術やカルチャーのトレンドを知るためには最適な場所といえる点。当初は音楽フェスティバルだったSXSWが始まったのは1987年。その後は音楽以外の領域が加えられ、規模が拡大していった。参加者は約40万人で、登壇者や展示企業、来場者は世界中から集まってくる。しかも登壇、展示するためには高度にクリエイティブやイノベーティブであることが求められる。企業が初めて発表する技術やコンテンツも多い。多くのクリエイティブやイノベーションに触れ、発案者と直接に交流できるコンベンションはあまりないだろう。
レストランなどを借りて出展

日本企業では、パナソニックとソニーが人気を得ていた。共にレストランや仮設の建造物を利用した独自の会場だ。
パナソニックはレストランを「パナソニック・ハウス」として、さまざまな新規プロジェクトの成果を紹介した。「ゲーム チェンジャー カタパルト(GCC)」と呼ぶ取り組みで、同社アプライアンス社の事業開発の一環だ。これまで社内になかった事業を発案することを条件とし、2017年4月から進めている。他企業との協働プロジェクトも多い。
例えばIoT技術を利用した自家製味噌作り(マルコメとの協働)、インタラクティブに香りを体験するテーブル(資生堂との協働)などがあった。このほか、二酸化炭素カートリッジを利用した歯の漂白デバイス、おにぎりロボット、犬用の歯ブラシなど、いずれも従来の家電のイメージを超えるアイデアに驚かされた。その他にも、あたかも光や風のある自然環境が外にあるかのような映像を映し出すバーチャルな窓、ノイズ除去機能のあるヘッドホンを外界とのパーティションにもするというウエアラブル・デバイスなど、同社のデザインスタジオからの出展も興味深かった。
アプライアンス社事業開発センターでGCC代表を務める深田昌則氏は、「カタパルトは30~40代の社員で議論して、未来の家電を考える方法だ」と説明する。ハードウエアだけでなく、体験や価値を提供するような製品を目指して、社内でコンテストを行い、カタパルトのプログラムで育成し、SXSWへ出展していく。これまでの製品づくりと異なり、プロトタイプで外部からのフィードバックを受けることの意味を重視。SXSWで映画人やミュージシャンを含めた幅広い人々の目にさらされることは、開発者らにとって大きな刺激となるという。今年は2回目の出展だ。




