阪急阪神百貨店は、大阪・阪急うめだ本店の店頭および同社が運営する化粧品のECサイト「Hankyu BEAUTY」にバーチャルメークアプリ「YouCam メイク」を導入した。「ハードルが高い」「商品購入を勧められそうで嫌」と百貨店を避ける若い女性に、同店を訪れてもらうきっかけにするのが狙いだ。阪急うめだ本店によると、導入後、若い女性の来店がじわじわと増えているという。

 JR大阪駅、阪急・梅田駅、阪神・梅田駅に囲まれた大阪一等地にある阪急うめだ本店。化粧品を販売する2階フロアの真ん中に、iPadが3台並んでいる。iPadで稼働しているのは、AR技術を活用して、店内で販売しているメーク商品を仮想的に試せるバーチャルメークアプリ「YouCam メイク」だ。

阪急うめだ本店の化粧品売り場。フロアの中央、華やかなシャンデリアの下に、「YouCam メイク」を使ったメーク商品の試用コーナーがある
阪急うめだ本店の化粧品売り場。フロアの中央、華やかなシャンデリアの下に、「YouCam メイク」を使ったメーク商品の試用コーナーがある

 YouCam メイクはもともと世界で累計5億ダウンロードを突破したコンシューマー向けスマホアプリ。同店が導入したのは、その法人版だ。アプリ内には複数のブランドの化粧品情報が組み込まれており、口紅やアイシャドー、マスカラといった商品カテゴリーやその色、ブランドで商品を検索できる。商品を選択すると、AR技術によって、その商品で施したメークをカメラに写した自分の顔にリアルタイムで合成。来店客はこのアプリを使うことで、さまざまな化粧品ブランドの商品を、各ブランドの販売カウンターに行かずに試せるわけだ。阪急うめだ本店のビューティー営業統括部化粧品販売部 ディビジョンマネージャーの濵田大輔氏は、「若い女性がひっきりなしに訪れる。“プリクラ感覚”で試しているようだ」と話す。

若い女性の“百貨店離れ”解消が狙い

 阪急うめだ本店がYouCamメイクを導入したのは、2017年7月のこと。背景にあるのは、若い女性の“百貨店離れ”だ。「ミレニアル世代は、ドラッグストアのプチプラコスメに慣れており、百貨店はハードルが高く感じてしまう」(濵田氏)。百貨店で扱っている化粧品は高いという思いや、化粧品ブランドのカウンターに行くと、商品を買うように勧められるのではないかという不安も強い。また、百貨店では、ブランドごとに売り場が分かれているため、自分が欲しい商品を横断的に試しにくいという難点もある。

YouCam メイクの画面。カメラで顔を写し、画面下のアイコンで試したい商品や色を選択すると、顔の画像にメークがリアルタイムで合成される
YouCam メイクの画面。カメラで顔を写し、画面下のアイコンで試したい商品や色を選択すると、顔の画像にメークがリアルタイムで合成される
店頭では「きれいきれいガール」と呼ばれる販売員が操作をサポート。「ただ、若い女性は説明しなくても自由に使いこなしている」(販売員の藤原ももこさん)
店頭では「きれいきれいガール」と呼ばれる販売員が操作をサポート。「ただ、若い女性は説明しなくても自由に使いこなしている」(販売員の藤原ももこさん)

 その点、YouCam メイクならば、1人で、複数のブランドの商品を試せる。しかも、メークの試用が簡単。本物のアイシャドーや口紅は、試すたびにクレンジング剤でメークを落とさなければならないが、バーチャルメークならば、アイコンをタップして商品を選び直すだけだからだ。

試用後、iPadに表示された二次元コードを読み取ると、スマートフォンのブラウザーに商品のリストなどが表示される。印刷して持ち帰ることもできる
試用後、iPadに表示された二次元コードを読み取ると、スマートフォンのブラウザーに商品のリストなどが表示される。印刷して持ち帰ることもできる

 二次元コードを使い、試した化粧品のリストを来店客のスマートフォンに取り込める機能もある。iPadの画面に表示された二次元コードを読み取ると、スマートフォンのブラウザ―にバーチャルメイクを施した自分の顔写真と使用した商品のリストが表示される。あるいは、その場でiPadからプリントアウトも可能。気になる商品は、ブランドのカウンターに実物を見に行ったり、リストを持ち帰って自宅などで検討し、後日、阪急のECサイトなどで購入したりできる。

 濵田氏は「バーチャルならば、自分がしたことがないようなメークも気軽に試せるので、お客様は楽しそう。まずは、百貨店に来て楽しいという体験をしてもらうことが一番。それが来店のきっかけになれば」と語る。実際、YouCam メイク導入後、若い女性を中心に来店客が増えているそうで、「現時点で試せるのは、店頭に入っている60ブランド中19ブランドだが、30ブランドくらいまで増やしたい」と濵田氏は意気込む。

阪急うめだ本店のビューティー営業統括部化粧品販売部 ディビジョンマネージャーの濵田大輔氏
阪急うめだ本店のビューティー営業統括部化粧品販売部 ディビジョンマネージャーの濵田大輔氏

 将来的には、店頭とECサイトの相乗効果も期待できそうだ。阪急阪神百貨店では、うめだ本店の店頭と並行して、化粧品のECサイト「Hankyu BEAUTY」にもYouCam メイクとの連携機能を導入した。ECサイトでは、YouCam メイク対応商品のページに「メークをシミュレーションする」というボタンがある。利用者がスマートフォンにYouCam メイクのコンシューマー向けアプリをインストールしておくと、ボタンをタップしたときにアプリが起動、メークを試せる仕組みだ。メーク商品の色味が伝わりにくいECサイトの欠点を補い、利用者が気に入ればそのまま購入まで誘導できるのが強みだ。

化粧品ブランドでも導入が進む

 YouCam メイクを開発したパーフェクトによると、百貨店ではほかに、東京の恵比寿三越が2017年9月から店頭に同様のシステムを導入。化粧品ブランドでは、コーセーの「コスメデコルテ」がGINZA SIX内の店舗などで運用している。

 また、法人版ではなく、コンシューマー向けアプリを販売促進に使う化粧品ブランドもある。誰もが遊び感覚で使えるコンシューマー向けアプリに商品を並べることで、不特定多数の消費者に気軽に自ブランドのメーク製品を試してもらえる、新規顧客にアピールできるといった利点があるからだ。パーフェクトによると、エスティ ローダーやイヴ・サンローラン、資生堂の「MAQuillAGE」(マキアージュ)など、現在、34の化粧品ブランドが利用しているという(日経トレンディネットの関連記事:「バーチャルメークアプリが20代女性に人気のワケ」)。

 若い女性が感じるハードルの高さは、百貨店と化粧品ブランド共通の悩み。彼女たちが肌身離さず持っているスマートフォンだからこそ、そのハードルを下げる効果的なツールになるようだ。

■変更履歴
初出時、阪急百貨店販売員の藤原ももこ氏のお名前が間違っていました。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2018/04/13 17:30]
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