流通店舗の管理や運営の自動化に向けて、流通業の業界団体「リテールAI研究会」が導入レベルの定義に乗り出す。今年4月以降、関係団体などに採用を呼びかける。クルマの自動運転のように進捗度を示すレベルを定め、幅広い業界で共通認識の普及を図る狙いがある。最終的には発注だけでなく商談もAIで自動化する。
一般社団法人の「リテールAI研究会」(東京都港区)が中心となって、「Retail AIレベル5」を策定した。流通業は店舗数が多いため、AIの導入に大きなコストがかかることが見込まれている。各段階で必要なスマートカメラなどのIT機器やAI対応のクラウドサービスなどの早期の普及や低廉化で、業界全体の底上げにつなげる狙いがある。最終的には発注だけでなく、店の棚の管理や商談もAIで自動化する。
具体的には、AIを全く活用していないレベル0、活用を始めたレベル1とレベル2、本格的な活用に乗り出すレベル3~5を示した。流通店舗の運営のレベル0では人が100%関与し、レベル1ではセルフレジの導入などによって、それが90%まで1割下がる格好だ。
レベル2からAIの導入が本格化して、カメラで棚の監視や顧客の動線分析などを導入することになる。マーケティング用のカメラの画像をAIがディープラーニングなどを利用して分析することで、どの商品が顧客の手に取られ、販売後に補充が必要なのか判断したり、顧客の店舗内での回遊などの動きを把握したりできるようになる。

レベル5では商談がなくなる
レベル2の導入は2017年以降に始まっているとしており、次の段階は20年以降のレベル3となる。顧客の挙動の画像を解析することによる万引きの防止や、顧客のプロファイルや行動に応じて売り場で商品を訴求するデジタルサイネージの導入などが条件となる。この時点で人の関与の割合は4割となり、半分を切ることになる。
米アマゾン・ドット・コムが、米シアトルで展開しているAI店舗の「Amazon Go」はカメラで商品の取得を認識し、アプリと連携してレジなしで決済できる。Retail AIレベル5ではレベル3相当と考えられる。
さらにレベル4では商品の管理や発注なども自動化され、25年以降の導入が見込まれるレベル5では完全に管理者が不要となる。同研究会は、レベル5になると現在の営業の商談などのプロセスもなくなり、メーカーなどが流通業に納入代金の一部を戻す「リベート」などの商慣習も必要なくなるとしている。
Retail AIレベル5は流通のサプライチェーンに関わるより広い企業を対象にしている。流通店舗の運営のほか、物流やインサイドセールス、メーカーのレベル5についてもそれぞれ定めている。
リテールAI研究会は福岡市に本社を構えディスカウントストアなどを展開するトライアルカンパニーが中心となって昨年6月に本格的な活動を始めた。約100社の会員企業が参加しており、流通業だけでなく、メーカー、物流、IT企業などが参加している。