細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに斬り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。番外編として連載に大幅に加筆して発刊した書籍『ブランドストーリーは原風景からつくる』の内容を一部抜粋して紹介する。3回目は、ブランドの愛着につながる好意と信頼を得る可能性を高める「ヒューマンスケール」について解説する。

自宅のキッチンにある「Amazon Echo Dot」。人間性を感じられるデジタル機器かもしれない(筆者撮影)
自宅のキッチンにある「Amazon Echo Dot」。人間性を感じられるデジタル機器かもしれない(筆者撮影)

前回(番外編の第2回「“のれんを守る”だけでは、ブランドの革新はできない」)はこちら

 ブランドへの愛着を形成するためには、生活者とブランドの間に強い感情的な絆がつくられていることが必要だ。好意と信頼は極めて重要である。しかし、そのブランドが好きであるという好意を抱かせ、信頼を築き上げるためには、ある一定のブランドとしての素地が備わっていないといけない。ブランドへの愛着を得るためには自己にとって精神的に近い関係性を保ちながら、自分がそのブランドの何かから保護されているという安心感が必要である。

 それは誠実な嘘のない、まっとうなブランドとしての姿ではないか。その揺るぎない人格を保持し、要望に応え、観客の様子を見ながら無意識的に心理的距離感を縮め、ブランドエクイティ(ブランドが持つ資産価値)が形成されていくのではないか。このような考え方を本書ではブランドにおける“ヒューマンスケール”と呼びたい。ヒューマンスケールは本来、建築で使われる用語である。その定義は文字通り人間的な尺度のことで、建築や外部空間など人間が活動するのにふさわしい空間のスケールのことを意味する。

 さらに自社の製品やサービスブランドを生活者に想起させるためには、ブランドイメージは不可欠。中でもブランドパーソナリティーは重要であると考える。ブランドパーソナリティーの定義は「ある所定のブランドから連想される人間的特性の集合」としたい。つまり、そのブランドを人格や生き方で例えるとどのような人で、その人格の振る舞いはどのような言動、身なりなのかを考えることである。

 ブランドエクイティを消費者に伝達するために、すべての接点でブランドパーソナリティーを通してブランドエクイティを提供する必要がある。例えばマクドナルドやディズニーランドであれば、カウンターでスマイルを0円で売ることも、キャスト(スタッフ)がパーク内で子供の目線までしゃがみ込んで対話しているのも、すべてのキャストがブランドパーソナリティーを理解した上で、行動や振る舞いを変容させて、ブランドとしての提供価値を顧客に履行している証拠である。

 人間的特性の集合であるブランドパーソナリティーは、最も重要な役割であることは間違いない。さらに、ブランドパーソナリティーを遂行し、その結果、人間的振る舞いによる活動に変換された情緒的なベネフィットの集合要素であるヒューマンスケールに注目する必要がある。このようなブランド活動が、ブランド愛着につながる好意と信頼を得る可能性を高める。

人間らしい振る舞いを感じさせるデジタル化も

 ここで、その“人けのある”情緒的なベネフィットの事例を紹介したい。1つ目はAmazonによる物理的な接点をつくることによるヒューマンスケールである。ウェブやスマホだけでなく、「Amazon Echo」「Amazon Go」でリアルに体感できる複数の接点を併せ持っている。Amazonの接点づくりはブランドパーソナリティーの域を超え、そのデバイスに人間的な振る舞いを感じる機能を付加させ、習慣化されるような状態を意図的につくっている。

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