細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに斬り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。番外編として連載に大幅に加筆して発刊した書籍『ブランドストーリーは原風景からつくる』の内容を一部抜粋して紹介する。番外編2回目の今回は、なぜ日本企業は世界で戦えるブランドマネジメントができないのかを考察した。
本書を手に取っていただいた皆さまの中には、ブランドマネジメントやそのデザイン、新規事業開発などさまざまな業務を行う方もいらっしゃるだろう。近々で言えば課題が複雑化し、デジタル化も急激に進み、一体何から手を付けてどのような手順で解決していけばいいのか、日々の業務の中で戸惑うことが増えているのではないだろうか。
<前回(番外編の第1回「ブランドストーリーづくりで、なぜ“原風景”が重要になるのか」)はこちら>
ブランド戦略で言えば、組織編成や人材育成、ブランド理念、ブランド戦略の構築プロセス、その施策となる製品開発やデザインの決め方、デジタルだけでなくリアルチャネル戦略にも関連するUX(ユーザーエクスペリエンス)、CX(カスタマーエクスペリエンス)という視点での新しい生活者との接点のつくり方など、やるべきことは多岐にわたり、頭を抱えている方も少なくないと思う。
私が日本企業だけでなく、グローバル企業におけるブランド戦略の進め方やブランド体制、ブランド管理の手法など幅広くその事例に携わってきた視点で言えば、日本の企業組織は過去の成功体験による方法論者の考えがいまだに強く、それが足かせになっている。それらが根強い企業文化として定着し、その結果ブランドに対する意識が暗黙知化されてしまっている。
つまり、“のれんを守る”という意味合いが、世界で戦えるブランマネジメントのガラパゴス化を生んでしまっているのかもしれない。老舗ブランドに必要なことは伝統と革新と言われているが、一般的には“伝統”が勝ることのほうが多いのが現状だ。なぜ、企業ではブランドの“革新”ができないのか、そのブランドの“暗黙知”が存在する理由は2つある。
1つ目は、技術力や営業力だけで事業拡大が可能な経済状況であったため、高度経済成長や、バブル時代など勢いで成長することができた経験がいまだ残像となり、ブランド戦略は営業力強化のツールであるという“暗黙知”がまだ残っていること。
2つ目は、日本では同族企業で創業者がブランドを育成する役割を果たすケースも多く、ブランドを育成する専門的な能力を有する人材が育つ環境をつくりにくかったこと。チームによるブランドマネジメントではなく、カリスマの能力であることによる属人化した“暗黙知”が存在しているからだ。
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