ブランディングプランナーの細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに切り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。今回は花王の新ライフスタイルブランド「MyKirei by KAO」を取り上げます。今回はインタビュー編。

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2020年4月に「Kirei Lifestyle」を具現化する新ライフスタイルブランド「MyKirei by KAO」を立ち上げ、シャンプーやコンディショナー、ハンドウォッシュの各商品を米国で発売した。パッケージはプラスチックのボトルではなく、フィルム容器「Air in Film Bottle(エア イン フィルム ボトル)」を初めて採用。3枚のフィルムを張り合わせて、容器の外側に空気を入れて膨らませる。中身が少なくなっても、ボトルの形状を維持しながら自立する
2020年4月に「Kirei Lifestyle」を具現化する新ライフスタイルブランド「MyKirei by KAO」を立ち上げ、シャンプーやコンディショナー、ハンドウォッシュの各商品を米国で発売した。パッケージはプラスチックのボトルではなく、フィルム容器「Air in Film Bottle(エア イン フィルム ボトル)」を初めて採用。3枚のフィルムを張り合わせて、容器の外側に空気を入れて膨らませる。中身が少なくなっても、ボトルの形状を維持しながら自立する
大谷 純子(おおたに じゅんこ)氏
花王 ESG部門 部門推進・ESG広報担当部長
大手マスコミにて9年間、番組制作現場を経験。主に海外ドキュメンタリーや国際共同制作に携わる。2006年 花王に入社。企業理念「花王ウェイ」の花王グループ啓発活動、社内広報を経て、13年グローバルコーポレートコミュニケーション推進を担当し、中期経営戦略に基づくプロジェクトを推進。17年より経営サポート部門を兼務し、トップコミュニケーションのサポートも担当。18年より現職(写真/名児耶 洋)
畑瀬 孝利(はたせ たかとし)氏
花王 欧米事業統括部門 欧米事業部 新規ビジネス開発担当部長
1991年花王入社。家庭品販売部門において、国内営業、アジア販売支援業務を経験。その後、2001年より事業部でのマーケティング担当を経て、06年Kao Consumer Products (Thailand)に駐在、東南アジアのスキンケアブランドマネジメントを担当。13年よりKao USAに駐在し、Vice President、Liaisonとして経営全般にわたってトップサポートの役割を担った。19年に帰国し現職(写真/名児耶 洋)

細谷 サステナビリティー(持続可能性)社会を推進するため、花王は2019年4月にESG(環境・社会・ガバナンス)戦略として「Kirei Lifestyle Plan」(キレイ ライフスタイル プラン)を打ち出し、20年4月にはKirei Lifestyleを具現化する新ライフスタイルブランド「MyKirei by KAO」(マイキレイ バイ カオウ)を立ち上げて、シャンプーやコンディショナー、ハンドウォッシュの各商品を米国で発売しました。こうした動きの狙いを、お聞かせください。

大谷 私が所属する「ESG」と付いた部門は、あまり聞き慣れない名称だと思います。ESGとは、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、前身は「サステナビリティ推進部」でした。プラスチック包装容器を削減する取り組みなど、当社はメーカーとして以前から環境に配慮してきましたが、次の段階として「S」の社会、「G」のガバナンスも強化して一体化することで、ESGを企業経営にしっかりと組み込もうと考えました。最近は他社からもESGという言葉が出てきていますが、当社は18年からESG部門を設けています。

 花王は1887年に創業し、90年に「花王石鹸」を発売。2020年で133年になります。近代化を急ぐ激動の明治時代の日本で質の高いせっけんを社会に送り出し、清潔で安心できる人々の暮らしを実現しようとしました。個々人そして家族の心が満たされれば、地域のコミュニティーや社会が繁栄し、国家の繁栄にもつながる。そこに貢献することが自分たちの事業の使命であり、今で言うサステナビリティーにつながっていると思います。

 それから商品や時代は変わりましたが、創業当時のスピリットを生かし、「豊かな生活文化の実現と社会のサステナビリティへの貢献」を使命として、133年間ずっとやってきています。花王の企業理念である「花王ウェイ」には、「私たちは、消費者・顧客の立場にたって、心をこめた“よきモノづくり”を行ない、世界の人々の喜びと満足のある豊かな生活文化を実現するとともに、社会のサステナビリティ(持続可能性)に貢献することを使命とします」とあります。「心をこめた」という言葉を企業理念に入れる企業はあまりないと思いますし、私は個人的に気に入っています。

 17年には「自ら変わり、そして変化を先導する企業へ」をスローガンに掲げ、4カ年の中期経営計画「K20」をスタートさせました。30年までに達成したい姿を「グローバルで存在感のある会社『Kao』」とし、事業の持続的成長と持続的な社会の実現のために、ESGを重視しながら、利益ある成長の実現に取り組んでいます。商品の開発に設計の段階からESGの視点を盛り込み、環境や社会に貢献しつつ、利益を上げて事業も伸ばすという攻めのESGを狙っています。

 そこで推進している戦略が、Kirei Lifestyle Planです。Kirei Lifestyleとは「こころ豊かに暮らすこと、すべてに思いやりが満ちていること」を意味しています。自分自身の暮らしが清潔で満ち足りているだけではなく、周りの世界もそうであることを大切にする。自分だけじゃなく、社会、さらには地球もということです。日本語の「きれい」という言葉は「美しさ」や「清潔」という意味だけでなく、心の状態や生きる姿勢も表現しており、それは自分自身に加えて社会そして地球の「きれい」にもつながっていくと考えています。Kireiとして英語表記にした理由は、きれいをグローバルに実現したいからです。当社の考え方を、どう表現していくか。そこで何か象徴的なブランドを立ち上げようとなったのです。

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