ブランディングプランナーの細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに切り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。今回は自動運転バス「GACHA」のデザインを担当した良品計画へのインタビュー編。

矢野 直子(やの なおこ)氏
良品計画 生活雑貨部 企画デザイン担当部長
1993年、良品計画入社。店舗勤務を経て生活雑貨の商品企画を担当。2002年より3年間スウェーデンに移住、欧州MUJIの商品企画開発に従事。帰国後、生活雑貨部企画デザイン室でFound MUJIなどを担当。08年、伊勢丹研究所(現、三越伊勢丹研究所)に入社。リビングフロアのディレクションと「moreTrees/鳩時計」「マルニ木工/ふしとカケラ」などの商品企画に携わる。13年より現職。14年から多摩美術大学統合デザイン科非常勤講師
斎藤 勇一(さいとう ゆういち)氏
良品計画 ソーシャルグッド事業部 部付課長
2018年より良品計画ソーシャルグッド事業部に所属。地域のさまざまな社会課題に取り組み、新たな生活価値を創出するためのソーシャルリノベーション事業に従事。 GACHAプロジェクトでは、グランドデザインの策定とロードマップの立案を行うとともに、Sensible4とフィンランドでの実証試験の対応を行う。現在ソーシャルグッド事業部部付課長を務める
良品計画がデザインした自動運転バス「GACHA(ガチャ)」。車体の前後を意識させないユニークなデザインで2019年度グッドデザイン金賞を獲得している
良品計画がデザインした自動運転バス「GACHA(ガチャ)」。車体の前後を意識させないユニークなデザインで2019年度グッドデザイン金賞を獲得している

細谷 フィンランドで2020年中にも実用化を目指す自動運転バス「GACHA(ガチャ)」のデザインを良品計画は手掛けています。公共交通機関として自動運転の研究を行うフィンランド企業のSensible 4と、17年からプロジェクトを推進しています。大雨や霧、雪といった過酷な気象条件でも動く点が特徴で、本稼働を目指して現在はヘルシンキ近郊で公道での実証実験を推進中です。

 この連載では、CtoC時代の中でお客さまと企業がどのように関わっていくかをテーマにしています。特に両者の関係性や“間合い”といった部分がどう変化していくのかに私は関心を持っています。そのため生活雑貨の「MUJI」(無印良品)ブランドで知られる良品計画が、なぜ自動運転に関心を示したのか、しかも乗用車ではなくなぜバスだったのかをぜひ聞きたいと思っています。

矢野 プロジェクトのきっかけは、フィンランドのヘルシンキで毎年開催される伝統あるインテリアデザインの見本市「Habitare(ハビターレ)」に、会長の金井(政明)が17年の開催時にトークイベントで招待されたことでした。世界中で「感じ良いくらし」を提案している無印良品の姿勢などを伝えた他、今後の暮らし方として誰もがシェアをするモビリティーの存在が普通になっていくだろうという考えを話しました。それをSensible 4のメンバーが聞き、「自分たちがやりたいことと同じだ」と共感していただいたのでデザインの依頼がありました。

 無印良品は日用品などをはじめ、最近は家やホテルまでつくっていますが、乗り物はほとんど手掛けていません。そこでまずは、Sensible 4のメンバーに会いに同年12月にフィンランドに行きました。Sensible 4は公共性を重視し、個人の車ではなくバスの開発を狙っていました。気候が厳しい国のため全天候型として開発を進め、北極圏でも対応できる高い技術を持っていました。ただエンジニア集団なので、デザインの支援が欲しかったそうです。

 フィンランドに行って私たちが強く感じたことは、行政から市民レベルまでデザインに対する高い意識が浸透している点でした。国土の多くが森林地帯で、豊かな自然と人が共生しているような国だからでしょうか、暮らし方や人と人とのコミュニケーションまでも「デザイン」として捉えていました。街中の商店を運営する普通のおじさんも、デザインを口にするほどでした。だからこそSensible 4もデザインにこだわりたかったのでしょう。デザインを重視するという企業の姿勢が当社と合致していたので、引き受けようと考えたのです。