ブランディングプランナーの細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに切り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。前回に引き続き、北海道コンサドーレ札幌を取り上げます。今回は解説編の後編。
<前回(第24回 コンサドーレ札幌が推進、ブランド価値向上のクリエイティブ)はこちら>
前回は欧州プロサッカーのクラブチームについてブランディングデザインの視点で考察しました。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)でも、近年は英国出身のネヴィル・ブロディ氏が東京ヴェルディのエンブレムデザインを手掛けるなど、一流のデザイナーがブランディングの一部を担うケースは出てきています。しかし、相澤陽介さんのような世界的なファッションデザイナーが北海道コンサドーレ札幌(以下コンサドーレ)のクリエイティブディレクターとしてクラブチームのデザイン全般まで手掛けるのは異例です。
相澤さんへのインタビューで私が驚いたことは、相澤さんが得意とするファッションブランドとは違う視点で、クラブチームのブランドを考えていたことでした。それは「戦力を強化するためのクリエイティブとは何か?」という視点です。まずはJリーグのビジネスを見てみましょう。
クラブチームの営業収入(売り上げ)には、3本柱として「入場料」「物販」「広告料」があり、この他にJリーグ全体の「放映権」があるといわれています。入場料、物販、広告料は密接につながっており、観客数の数に比例して入場料やグッズ収入が増え、広告料を払うスポンサーが多く集まるといった好循環が生まれます。放映権についてはクラブチームの経営努力だけではなく、Jリーグ全体のブランド向上が不可欠です。
2018年度の各リーグ(J1やJ2、J3)合計の営業収入は約1257億円(Jリーグの公式サイトより)で、17年度比での成長率は約113.7%になっています。中でもヴィッセル神戸はJリーグ史上最高の営業収入で、96億6600万円を計上しています。J1平均では約47億5500万円ですが、コンサドーレは約30億円でした。そうした状況の中、デザインの力でクラブチームの強化に貢献することが、コンサドーレのクリエイティブディレクターとして相澤さんが目指す方向です。ブランド向上につながるクリエイティブ資産へ投資し、感性価値への刺激を与えることでファンの愛着を育むのです。
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