ブランディングプランナーの細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに切り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。前回に引き続き、北海道コンサドーレ札幌を取り上げます。今回は解説編の前編。
<前回(第23回 スポーツとファッションで異なるブランド作り、少しずつ変えたい)はこちら>
この連載を通して、人と人とのつながりによるブランディングデザインを取り上げ、特に「場(プレイス)」の重要性を語ってきました。しかし新型コロナウイルスの影響で人同士のリアルな接点が制限されるなか、「場」を超えた人と人との感情的な関係性を、どのようにブランドづくりに反映させるべきなのかを、改めて考えさせられます。
世界の第一線で活躍しているファッションデザイナーであり、北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブディレクターでもある相澤陽介さんへのインタビューでも、人と人との感情的な関係性について重要なキーワードをお聞きできたように思います。1つの会場に多くの観客が集まるスポーツや音楽などのエンターテインメントビジネスにとっては、まさしく「場」の共有性を超越したブランドへの愛着をいかに育むかが今後、必要不可欠になります。
相澤さんは「ファッションブランドは好きな人に向けてつくるものである一方、地域密着のサッカーブランドはあまりにもマス的な存在なので、誰にでも受け入れてもらえるようにすることを守らなくてはいけない」と話していました。それには、子供からシニアまで誰にでも受け入れてもらえるようなオープンなブランドであるための「おおらかさ」が必要だと言います。例えば、子供が好きなキャラクターアイテムもあれば、大人が欲しくなるような格好よく洗練されたグッズアイテムもあるように、マスな存在としてブランドの許容範囲が求められるというのです。
パワーのあるクリエイティブは、すべて同じようなものに仕立ててしまう傾向があります。具体的に言えば、世界観が合わないものや幼稚なものは排除してしまいがちです。しかし相澤さんはすべての人を受け入れています。ブランド戦略の最終目標はファンに愛着をもってもらうことにありますから、サッカーブランドのマネジメントをするのと同様なおおらかさが求められるとみています。
ただし、ここに課題があります。ブランドのマネジメントをするための最低限のルール設定はやはり必要になります。例えば、ブランドコンセプトやトーン&マナー(視覚的なデザインマネジメント)、トーン・オブ・ボイス(言語的なデザインマネジメント)などで、ブランドの世界観を規定しようとします。しかし、これらは1つの考え方に基づいてブランドの軸を作成するため、コアターゲットを設定せずにマスをおおらかさで許容しようとすると、ブランドの全体像がぼやけてしまったり独自性のない印象になったりしがちになるのです。
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