ブランディング・プランナーの細谷正人氏が新たな視点でブランディングデザインに切り込み、先進企業に取材する連載「C2C時代のブランディングデザイン」。今回は北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブディレクターに就任した相澤陽介氏へのインタビュー編。
北海道コンサドーレ札幌 クリエイティブディレクター
細谷 2019年2月、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌は、ホワイトマウンテニアリングのデザインで知られる相澤陽介さんが、クリエイティブディレクターに就任したことを発表しました。ポスターグラフィックをはじめ、オフィシャルグッズなどのデザインも担当しています。相澤さんと言えば、ファッションブランドで知られていますが、スポーツという新分野を手掛けることに、ためらいとか戸惑いのような気持ちはありましたか。
相澤 全然ありませんでした。僕はサッカーの経験はなかったのですが、サッカーを見ることは大好きでした。仕事柄、欧州に行く機会が多く、現地のサッカー場にもよく足を運んでいました。ファッション業界では、一番か二番を争うぐらい、サッカーを生で観戦しているのでは、と自負しています(笑)。
だからコンサドーレから声をかけられる以前から、日本のクラブチームもこんなデザインがあったらいいのでは、などと考えたことはあります。ただ、日本のプロスポーツの魅力は海外とは全く違うものだと思います。日本のプロスポーツは、いわば“体育会”の延長のようなもので、スポーツというよりも体育のイメージがあるような気がします。それが選手のあるべきイメージとか、ユニホームなどのデザインにも反映されているのではないでしょうか。
一方、僕らが欧州サッカーに魅了される理由は、もうシンプルにかっこいいからですよ、まるでファッションブランドを見ているような感じです。そこの違いは大きいですね。実際、イタリアの「GQ」や「Esquire」といった著名な男性ファッション誌の表紙をロナウドなど有名選手が飾っています。移動時のオフィシャルスーツやオフでの服も有名ブランドがサポートしている。
もちろん日本のクラブチームもオフィシャルスーツを有名ブランドが手掛けてきています。しかし、それでも欧州と何かが違う。それはクラブチームとしてのブランドの一貫性にあると思いました。それぞれは、すごくいいものです。しかしブランディングは、単純にかっこいいスーツを着ることでないんですよ。
ホワイトマウンテニアリングもそうですが、ファッションの場合、単にセンスのいい服を作って売るだけではなく、どんなメッセージを込めるか、どういう像に向けて自分の考えていることを形にするか、というところまでがセットです。そこにはカタログやインビテーションのデザインまで含んでいます。だからブランドとして伝わる。ファッションの視点で見ると、こうした部分が弱いと思いました。
細谷 今回、クリエイティブディレクターとしてタッチポイントをコントロールしながら、ポスターやオフィシャルグッズなどをブランディングの視点で全般にわたって見ていくのですね。
相澤 はい。既存のものをリスペクトしながら、まずはポスターやウェブ関係など、いわゆるアウトプット商材から着手しています。びっくりするぐらい多いんですよ。いきなり全部を変えるのは難しいので、3年で結果を出そうとしています。
例えばチケットについても見直したいと思っています。セリエAのチケットって見たことありますか? すごくかっこいいデザインで、大事に保管しておきたくなるほどです。でも日本のチケットは、販売会社が扱っており、フォーマットが決まっていますから、簡単にデザインを変えることは難しい。でも、そうしたところも見直していきたいですね。コンサドーレのスタッフの名刺だって、もっと工夫できるかもしれない。そうした観点で1つひとつアップグレードをしていく。まだ本当に手探り状態ですが、続けていきたいですね。
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