細谷正人氏が先進企業のブランディングデザインに斬り込む連載「C2C時代のブランディングデザイン」。和菓子や洋菓子を製造・販売するたねやグループ(滋賀県近江八幡市)を3回にわたり取り上げます。今回は山本昌仁CEOへのインタビュー後編。

山本 昌仁(やまもと まさひと)氏
たねやグループ CEO
和洋菓子製造販売のたねやグループCEO(最高経営責任者)。1969年に滋賀県近江八幡市でたねや創業家の10代目として生まれる。19歳より10年間、和菓子作りの修業を重ねる。24歳のとき全国菓子大博覧会にて「名誉総裁工芸文化賞」を最年少受賞。2002年、洋菓子のクラブハリエ社長、11年にたねや4代目を継承し、13年より現職

細谷正人氏 これからの時代に向けてブランドをつくるということについては、どのようにお考えですか。

山本昌仁氏 ブランドって、つくろうと思ってもつくれるものじゃないと思います。たねやというブランドが浸透するまで、100年近くかかっていますから。現在まで先代がずっとやってきたのは、うそのない、まっとうなことを素直に裏表なくやっていくということ。だから、ラ コリーナでも工房をガラス張りにするなどして、お菓子を作っているところを見てもらっています。それが安心や安全を感じさせるのです。

 原材料の仕入れでも、裏表がない農家の方々と密にやっていくことで、ブランドが自然とできてくる。農家の方々が1年中、汗水たらして作った1粒のお米や小豆、栗などの自然の恵みがなければ、お菓子を作れません。そういった感謝の気持ち、毎日の裏表のない積み重ねが、ブランドにつながっているのではないでしょうか。

 通り一遍の表面的なことなら簡単です。しかし100年、200年と続けられるかと問われると、化けの皮が剥がれてしまいます。レンガでも本物にしないとあかんと思うのは、タイルだったらすぐに割れて、中のコンクリートが出てくるからです。レンガは古くなっても味になるんですよ。

 昔の家では、柱に印を付けて子供の背を測っていたことがありましたね。10年、20年たって大人になったときには、これが思い出になったり、かけがえのない家のデザインになったりします。そういうことの積み重ねを大事にしていくことが重要であり、ブランドへとつながっていくんじゃないかなと思っています。

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