
米アマゾン・ドット・コムの広告プラットフォーム「Amazon広告」は、ECサイト「Amazon.co.jp」の商品ページと密接な関係にある。この点が米グーグルや米メタといった、他の広告プラットフォームと最も大きく異なる。広告効果を最大化するには、販売戦略や商品ページの情報を合わせて設計する必要がある。Amazon広告は非常に複雑な仕組みだが、フレームワークを用いて分かりやすくひもといていく。この仕組みを理解したうえで、3つのステップで下準備を進めることが成果につながる。
「Amazon広告は、下準備で(その後の成果が)ほぼすべてが決まると言っても過言ではない」
D2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)のコンサルティング業務を手掛けるAnyMind Group(エニーマインド、以下AnyMind)マーケティングオペレーションマネージャーの内田直希氏はこう言い切る。Amazon上の商品ページにある商品タイトルやコンテンツの最適化といった情報設計はもちろんのこと、特に重要なのは広告を出稿する検索キーワードの選定や販売個数の増加だ。
販売個数を伸ばすことを目的とした広告の効果を高めるために、販売個数の増加という下準備が必要というのは一見矛盾するようだが、Amazonならではの仕組みが関係している。これらは、Amazon上の商品力を表す「商品パワー」やAmazon利用者と広告の相性を測る「広告スコア」と密接な関係にあるからだ。それらの指標が高いほど、広告が表示されやすくなるといわれる。より集客効果を高めるうえで、事前に広告スコアを高めるためのテクニックがある。
デジタル広告の出稿方法は、今や入札制が当たり前だ。広告主は広告を表示したい条件に合わせて入札単価を設定する。その出稿表示条件を満たした場合に、出稿を希望する広告主間で入札が行われて、表示される広告が決まる。
分かりやすいのは、検索サービスで検索されたキーワードに連動して広告が表示される「検索連動型広告」だろう。例えば、Googleの利用者が「テレビ」というキーワードで検索したときに、当該キーワードに入札しているテレビメーカーや家電のECサイト事業者などの間で入札が行われ、競争に勝った広告主の広告が掲載される。注意すべきなのは、広告配信のシステムは入札単価だけで掲載する広告を決定しているわけではないという点だ。ここに広告スコアが関係している。
検索サービスであれば過去の広告のクリック率(CTR)などがスコアの算出に加味されているとされる。検索サービスの本質的な価値は、利用者が検索したキーワードに最も適した情報を提供すること。そのため、クリックされない検索連動型広告は、検索キーワードに対してそぐわない情報だと検索サービスのシステムは判断するわけだ。広告運用で最適化してCTRを高めることで、入札の競争でも有利になる。
それに対して、Amazon広告における広告スコアは販売個数が強く関係している。「Amazonはどのキーワードで検索して商品を買ったのかという、キーワードと商品の販売個数の掛け算でスコアを算出している」(AnyMindの内田氏)。やみくもにさまざまなキーワードで広告を出稿して販売個数が分散すると、広告スコアの分散化にもつながりかねないのだ。
そして、販売個数は、Amazon上の商品力を表す「商品パワー」にも大きな影響を及ぼす。Amazonでは商品ごとに「ASIN(アマゾン・スタンダード・アイデンティフィケーション・ナンバー、通称エイシン)」という、商品識別用の10桁の英数字で構成されたコードが振られる。「ASINに対して売り上げ実績が積み重なる。商品ページのPV(ページビュー)や販売個数などで商品パワーは決まる」と電通デジタルのコマース部門Amazonルーム第1グループ志賀靖氏は説明する。商品パワーが高いほど、Amazon上で人気商品と判断され、広告が表示されやすくなる。Amazonでマーケティングをするうえでは広告スコアと商品パワーを高めることが、極めて重要になる。
つまり、Amazon広告の効果を最大化するための下準備とは、「(1)キーワード選定」「(2)キーワードごとの販売個数の増加」「(3)商品パワーの強化」となる。これは、多くの広告主のAmazon広告の利用目的が売り上げ増加であるため、より購買に近い広告サービスである「スポンサープロダクト広告」の検索連動型広告から利用し始めることが一般的だからだ。ブランディングを目的とした動画広告の活用などはこの限りではない。
下図はAmazon広告のうち、最も利用されるスポンサープロダクト広告の検索連動型広告を図式化したものだ。EC支援事業会社いつもの協力の下で作成した。Amazon広告最適化のプロセスは、商品の販売に結びつきやすいキーワードなどで広告を出稿し、販売個数を増やしてAmazon上の商品力を高める。そうしてキーワード検索での上位表示につなげ、自然流入を増やすことでベストセラー(売れ筋)を目指し、利益率を向上させていくことになる。
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