
丸亀製麺が2023年5月16日に発売した「振るうどん」が、3日で約21万食のスタートダッシュを決めた。新型コロナウイルス感染症の拡大で、3年余り続いたマスク生活の次の時代を見据え、「テイクアウトの概念を覆す商品」で勝負を仕掛ける。丸亀製麺が新時代戦略の柱に据えるのが、顧客だけでなく従業員をも巻き込む“感動体験”だ。緻密なデータ分析と経験に基づく直感をミックスした、丸亀製麺ならではのアフターコロナの新戦略を追った。
「Shake Cup! Shake Cup!」。1990年に発売された米米CLUBの「Shake Hip!」のリバイバル曲に合わせ、若手女優や人気ダンサーがうどんの入ったカップをシェイクしながら、東京都渋谷区の表参道で踊り出す――。そんな新CMを引っ提げてデビューしたのが、丸亀製麺が2023年5月16日に発売した「丸亀シェイクうどん」(以下、シェイクうどん)だ。全国にある約835店舗(23年4月現在)の一部店舗で、通年商品として販売した。
丸亀製麺は、販売開始に先立つ23年5月9日に東京・渋谷、同11日に大阪・梅田で、シェイクうどん計約1万食を配布するイベントを行った。イベント前日の8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の取り扱いが2類から5類へ移行したためだ。
新型コロナが拡大したこの3年、外食のテイクアウトは、店舗でのイートインができず、どちらかといえば消去法で仕方なく選ばれるケースが多かった。だが、5類へ移行になれば状況は変わる。店舗でのイートインに顧客が戻るとともに、魅力的なサービスを提供できないテイクアウトは、顧客から選ばれなくなる可能性が高い。
そこで、「新時代のテイクアウトはイートインの代替えではなく、テイクアウトだからこそ感じられる『楽しさ』『わくわく感』といった体験を提供することが重要」と、トリドールホールディングス執行役員最高マーケティング責任者(CMO)で丸亀製麺取締役マーケティング本部長の南雲克明氏は語る。
だからこそ、5類移行直後にイベントを開催し、本格販売を始めるというスケジュールでシェイクうどんを世に出したのだ。
「うどんの概念、テイクアウトの概念を変えていくことを含め、我々はトレンドをつくる側の集団でいたい。唯一無二の存在こそ、丸亀製麺が本当に目指すところ。そこに成長の道がある」。丸亀製麺を展開する外食大手、トリドールホールディングス(以下、トリドール)の粟田貴也社長は、アフターコロナ時代の幕開けを象徴する新商品の発売前に、こう力を込めた。
初年度2000万食で、コロナ禍のヒット作「うどん弁当」超えへ
シェイクうどんはその名の通り、“振るうどん”だ。カップ型の容器に、うどん1玉とだし、野菜などの具材が詰められ、カップを上下に振ることで、麺と具材がよく混ざり合う仕組みだ。「梅おろしうどん」「ピリ辛坦々うどん」「ごまだれサラダうどん」といった5種類をラインアップし、価格は税込み390円から。発売から約2年で3500万食を売り上げた大ヒット商品「丸亀うどん弁当」に次ぐ、通年販売のテイクアウト専用シリーズとなる。
丸亀製麺の山口寛社長は、「『これはいける』と思ったのは、うどん弁当以来。うどん弁当の初年度の売り上げは2000万食。シェイクうどんもその数字を目指す」と意気込む。
目的は新規層の拡大。特にZ世代を狙う
新商品の目的はユーザーの幅を広げること。特に、これまで丸亀製麺の利用機会が少ないZ世代(1990年半ばから2010年代前半生まれ)へのアピールを目指す。
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