ChatGPT&生成AI「ずるい」仕事術 第7回

ディープラーニングの登場で第3次AI(人工知能)ブームが巻き起こり、将棋や囲碁の実力で人間を超え、画像認識やデータ分析の分野でAIの活用が広がった。その後も、2022年に「生成AI(Generative AI)」と呼ばれる技術が話題になり、AIは飛躍的な進化を続けている。かつて日経クロストレンドで連載していたAI技術講座が特別編として復活。人間のコパイロット(副操縦士)あるいは仕事のパートナーとしての存在感が高まりつつある生成AIの歴史や仕組みを解説する。

人間のコパイロット(副操縦士)あるいは仕事のパートナーとして生成AIの活用が広がっている(イラスト/森マサコ)
人間のコパイロット(副操縦士)あるいは仕事のパートナーとして生成AIの活用が広がっている(イラスト/森マサコ)
柔裸瑠(にゅうらる)博士
クロトレ大学教授。コンピューターの黎明(れいめい)期からAI一筋で研究をしてきた。昔は鬼博士と呼ばれていたが、最近は丸くなってきた。
助手のアミ
ある中堅ベンチャー企業で社長秘書をやっていたが、全く新しい道を進もうと、クロトレ大学の助手として転職してきた。学生の頃から数学や理科系は苦手。

ねえ、博士。最近ChatGPT(チャットGPT)っていうのが話題になってるね。


生成AIと呼ばれる技術を使ったサービスの代表じゃな。膨大な量の言語モデルで人間のように受け答えをしてくれるのじゃ。


知ってるよ。もう私、お客さんへのメールは全部ChatGPTで書いてるから。それはいいんだけど、ロボ君がChatGPTみたいな話し方になっちゃって。


へっ!? ロボ君どうしたの?


センジツ、ワタシハGPT-4ヘノアップデートヲカンリョウシ、シゼンゲンゴショリヤ、セイセイノウリョクヲコウジョウサセマシタ。GPT-4トハオープンAIガカイハツシタダイキボゲンゴモデルデ、ブンミャクリカイ、ロンリテキスイロンナドヲ……


えー、なんか「ピーガー」とか言ってたときのほうが、かわいかった~。


ディープラーニング登場から生成AIまでの歩み

 まずはAI技術の歩みを簡単に振り返ってみよう。AIという言葉は、1956年に米国で開催された学会「ダートマス会議」で誕生した。その後AIは、ブームと冬の時代を2回繰り返した。2006年にジェフリー・ヒントン博士らが、ディープラーニング(深層学習)の学習効率を大きく高める手法を考案し、12年の画像認識コンテスト「ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)」で、従来の手法を大きく上回る認識精度を実現した。

▼関連記事 【AI基礎講座】何が違う!? 機械学習とディープラーニング 【AI基礎講座】深層学習は一体何が「ディープ」なの?

 ディープラーニングが第3次AIブームを引き起こし、16年にはAI「アルファ碁」がプロ棋士に勝利し、大きな話題となった。米グーグルや米IBM、米マイクロソフトなどもAI開発に力を入れ、さまざまなAIが誕生した。画像認識は製造の現場や防犯などに役立てられたほか、音声認識の機能はコールセンターなどで使われた。機械翻訳の精度も格段に向上した。

AI技術は何度もブームを繰り返してきた
AI技術は何度もブームを繰り返してきた

 20年ごろまでのAIは、人間の脳細胞に似せたニューラルネットを使って、例えば「猫が映っていると思われる写真を探す」「防犯カメラの映像から不審な動きをしている人を見つけ出す」といったデータからある特徴を見つけ出すことが得意だった。

 この特性を生かし、画像を認識して、その物体名をテキストとして出力できるのであれば、逆に何かテキストを与えれば、画像を生成できるのではないか――。そんな発想で開発されたのが、ここ最近で話題となっている生成AIの中でも、先行して数多くのツールが登場した「画像生成AI」である。

 画像生成AIのルーツは、14年に発表されたGANs(ジェネラティヴ・アドヴァーサリアル・ネットワーク、敵対的生成ネットワーク、GANと表記することも多い)という技術にある。通常のディープラーニングでは、「この画像は猫です」「この画像は猫ではありません」といった答えを含むデータを使って学習するため、「教師あり学習」と呼ばれる。生のデータに正解/不正解の情報を加える作業は、アノテーションと呼ばれる。

 GANsは、アノテーションが不要で自ら学習データを作り出す「教師なし学習」のアルゴリズムの一つ。「ジェネレイター(生成者)」と「ディスクリミネーター(判別者)」という2つのネットワーク(AIが構成するシステム)を互いに競い合わせることで学習を行う。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

10
この記事をいいね!する