既存顧客の売り上げを拡大する取り組みである「カスタマーサクセス」。このシリーズではカスタマーサクセス業務を疑似体験するストーリーを、書籍『実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー』(日経BP、2023年) ▼Amazonで購入する から一部抜粋してお届けする。第2回以降は、主人公・高山浩介が初めて取り組んだカスタマーサクセスの導入記を、〈ドキュメント〉と〈取るべき行動の解説〉という2つの形式で紹介する。

※日経クロステックの記事を再構成
▼前回はこちら カスタマーサクセスの本質は顧客立場での活動 導入に「3つの壁」

〈ドキュメント:何から始めればよいのか〉

 株式会社Smart Lodging Bookは、都内に本社のあるホテルの予約サイト運営企業である。サブスクリプション型のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)ビジネスを展開している。同社にとっての顧客はホテルであり、各ホテルの担当者が同社のサービスを使って簡単に「ホテルの紹介・予約ページ」を作成できるようにしている。元大手Webコンサルティング会社の役員が独立して立ち上げ、従業員900人の規模にまで急成長した。

 本連載の主人公は高山浩介。新卒後に大手の人材採用コンサルティング企業で営業企画に携わり、成績も順調に伸ばしてきたが、マンネリ化した日々に疑問を持ちながら過ごしていた。

 そんなある日、人材採用イベントでSmart Lodging Bookの社長の話を聞く機会があり、その企業理念や人材に対する考え方に強く共鳴し、同社への転職を決意。

 Smart Lodging Bookに入社すると、豊川貴久部長が率いる営業企画部に配属される。すると、実は同社では多くのホテルを顧客としてきたが、新規顧客開拓の伸び率がやや低下してきていることから、既存顧客の解約率を下げることと、既存顧客からの売り上げを伸ばすことが部門の課題となっていることを知らされる。

 そこで行われていたのが、「カスタマーサクセスを導入すべきではないか」という議論であった。

 カスタマーサクセスという言葉を聞いた高山は、大学時代の先輩である藤島誓也がカスタマーサクセスに関する会社を立ち上げていたことを思い出し、同社のセミナーに参加して久しぶりに先輩との旧交を温める。これを機会に、高山はカスタマーサクセスについて興味を持ち始める。

 そのようなとき、高山は部長の豊川との1on1ミーティングで、あるプロジェクトについて話をする。

 「カスタマーサクセスって知っているか?」

 豊川は高山に尋ねた。

 「はい。先日も先輩の会社がやっているカスタマーサクセスのセミナーに参加してきました」

 「それなら話は早い。高山君、うちでもカスタマーサクセスを導入しようと思う。君にやってもらえないだろうか」

 「分かりました!」

 高山はすぐさま快諾したが、実は何から始めればよいのかさっぱり分からなかった。本も読んでいたが、実際に手を付けるには何から始めればよいのだろうか。そこで高山は、カスタマーサクセスに詳しい先輩の藤島を訪ねた。

 「おいおい、それってコンサルじゃないか。でもうちはカスタマーサクセスを専門にしているベンダーだし、お前と俺の仲でもあるから、特別に教えてやるよ。まずは歴史からだな」

 藤島は早速レクチャーを始めた。

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