サイゼリヤ2代目社長として13年間辣腕を振るった堀埜一成氏。社長になった際に「コンセプト以外は全部変える」と宣言し、実際、サイゼリヤ事業の基盤をつくり直した人物である。社長を退任して初の著書『サイゼリヤ元社長がおすすめする図々しさ リミティングビリーフ 自分の限界を破壊する』(日経BP)を2023年5月に出版した堀埜氏に、今回は「日本人の給与を上げる方法」を聞いた。
――サイゼリヤを国内外1500店舗以上に育て上げ、2020年以降のコロナ禍でも揺るぎない経営基盤をつくりあげた堀埜さんに、日本の課題について、お考えを聞かせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
堀埜一成氏(以下、堀埜) 私の話がお役に立つのでしたら、それはうれしいことです。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
日本人の給与が低いのはなぜか? それは問題が問題になっていないから
――まずは、この課題からにしたいと思います。「日本人の給与が低い」。給与が増えない日本は「貧乏になった」と指摘する人もいます。
堀埜 「日本人の給与は低い」といわれていますが、まず、問題が問題になっていないと思います。「日本人の給与」とは何を指しているのでしょうか。普通に考えれば「平均給与」になりますが、平均で語ってよい問題なのでしょうか。また、「低い」というのは何に対してでしょうか。よく見るのは外国との比較ですが、外国と比較するなら、なぜ為替の話を一緒にしないのでしょうか。
異なる国の商品の価格や経済力の違いを体感的に比較する手法としてかつて「ビッグマック指数」というものがありました。世界に展開するハンバーガーチェーンであるマクドナルドの看板商品「ビッグマック」の価格で、国の経済力を比較するのです。今も使われることがあるようですが、現在のマクドナルドは店のオーナーが商品価格を決めるので、一つの国におけるビッグマックの価格は一つではありません。店によって価格は違っており、例えばラスベガスは高いですが、ロサンゼルスは安い。
外国と比較するなら、為替でいろんな数字がものすごく変わります。実際、私がサイゼリヤにいたときは、為替の動きにピリピリして経営にあたっていました。1ドル100円と130円では1.3倍もの違いです。日本は外国から輸入している物があふれているわけですから、為替は生活者にとってもダイレクトに影響します。給与の話をするなら為替抜きには語れないはずなのに、あまりそうした議論にはなっていない。
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