デザイン性や個性を重視し、付加価値を高めた「ライフスタイルホテル」と呼ばれるカテゴリーに狙いを定め、野村不動産ホテルズが2018年にスタートしたのがホテルブランド「NOHGA HOTEL(ノーガホテル)」だ。2年以上滞在を続ける顧客もいるほど支持される同ホテルが目指すホテルの在り方とは?

ノーガホテルは上野、秋葉原、京都にある。2号店のNOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYOは、秋葉原・電気街のど真ん中にあるとは思えない落ち着いたたたずまい
ノーガホテルは上野、秋葉原、京都にある。2号店のNOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYOは、秋葉原・電気街のど真ん中にあるとは思えない落ち着いたたたずまい

たった3人で始めた新ホテル作り

 「日本を訪れる海外の友人にお薦めできるようなホテルが、日本にはないと感じていた」――ノーガホテル開業時を、ノーガホテルブランドを統括する野村不動産ホテルズ運営統括部長の中村泰士氏は振り返る。

 野村不動産ホテルズは、野村不動産ホールディングスがホテル事業に新規参入するにあたり、2017年に設立した子会社だ。野村不動産ホールディングスにとってホテル事業は、街づくりへの新たなアプローチ。これまで同社はマンションやオフィス、商業施設などを扱ってきたが、これらは居住者やテナントが決まると、接する顧客が固定されてしまう。それに対し、ホテルは世界中からさまざまな顧客が次々と訪れる。しかも、その需要は今後も伸びる可能性が高い。規模は大きくはなくとも、人が集う場所として、街づくりへの影響は大きいと判断した。また、「顧客と直接対峙することで、施設の運営力を伸ばしていきたいという思いもあった」と中村氏は説明する。

 こう聞くと大きな取り組みだが「実は立ち上げのメンバーは私を含めてたった3人」(中村氏)。しかも全員がホテル運営に直接携わるのは初めてだった。手探りの中、15年10月から3人でホテルのブランド設計や会社設立準備を始めたという。

 「大変でした」と中村氏は苦笑しつつ、「その中でも我々に共通していたのは、今までのホテルとは違うこと、革新的なことをやりたいという思いだった」と語る。それが結実したのが、18年11月に開業した1号店の「NOHGA HOTEL UENO TOKYO」(以下、ノーガホテル上野)。会社設立準備からたった3年で開業までこぎつけたのである。

野村不動産ホテルズ運営統括部長の中村泰士氏。ノーガホテル全般のブランディングと運営を統括する立場にある
野村不動産ホテルズ運営統括部長の中村泰士氏。ノーガホテル全般のブランディングと運営を統括する立場にある

空白の地域密着型「ライフスタイルホテル」を狙う

 ノーガホテルの位置づけは、1泊2万~3万円、1室20~30平方メートル程度のライフスタイルホテルだ。「ブランド設計にあたり、ビジネスからラグジュアリーまで、国内外のホテル約300軒を視察し、検討した。その結果、当時の日本でぽっかり空いていたのが、海外でいう『ライフスタイルホテル』というカテゴリーだった」(中村氏)

ノーガホテルはデザイン性や個性を打ち出すライフスタイルホテル。写真はノーガホテル秋葉原の客室
ノーガホテルはデザイン性や個性を打ち出すライフスタイルホテル。写真はノーガホテル秋葉原の客室

 視察と並行して行ったヒアリングでヒントになる声も聞いた。それが冒頭の「友人に薦められるホテルがない」だ。海外では、友人が住む街を訪れる際、その街のお薦めホテルを紹介されるケースが多いが、日本では、海外から来る友人に対し、紹介したくなるホテルがなかなかないという。

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