マーケティング1年目の集中講座 第2回

「熱心にマーケティングを学ぶ人ほど、陥りやすい誤解がある」。そう語るのは、グロースX取締役COO/インサイトフォース取締役の山口義宏氏だ。これまで勉強してきたことが実践では役に立たず、考えや視野の“狭さ”が原因で、逆に足を引っ張ってしまう場合もあるという。どうしたら落とし穴を回避できるのか。若手のうちに知っておきたい「5つの誤解」を聞いた。

熱心にマーケティングを勉強する人ほど、おちいりやすい誤解がある。すべては考えや視野のせまさが原因だ(写真/Shutterstock)
熱心にマーケティングを勉強する人ほど、陥りやすい誤解がある。すべては考えや視野の狭さが原因にある(写真/Shutterstock)

 マーケティングを勉強してきたのに、実践でうまく生かせない。デジタルマーケティング施策を矢継ぎ早に打っているのに、なかなか成果が出ない。マーケティングに従事したばかりの若手の多くは、さまざまな悩みを抱えながら仕事と向き合うことになる。実際、マーケティングを生かして成長を続ける企業に共通する考え方とは何なのか、グロースX取締役COO/インサイトフォース取締役の山口義宏氏に聞いた。

 山口氏は、20年を越える社会人生活の大半、マーケティング畑を歩んできた。いわばマーケティングのプロだ。大手メーカーの子会社で戦略コンサルティング事業の事業部長などを歴任し、2010年に企業のブランド・マーケティング領域に特化した戦略コンサルティングファームとしてインサイトフォースを設立した。若手のうちから企業の経営層に接する機会も多く、最初の2~3年はビジネスの視野に差を感じ、うまくいかない日々が続いたという。その経験から、若手が知っておくべき「5つの誤解」を挙げる。

インサイトフォース取締役の山口義宏氏
グロースX取締役COO/インサイトフォース取締役の山口義宏氏。著書『マーケティング思考 業績を伸ばし続けるチームが本当にやっていること』(翔泳社)が2023年2月に発売

誤解1「マーケティング」という言葉の意味は共通認識である

 熱心に勉強してきた人ほどつまずきやすい、最初の壁が「マーケティング」という言葉の解釈の違いだ。これまで大学や企業でマーケティングに関するさまざまな知識を勉強してきた人も多いと思うが、「ビジネスの現場では、人や部署、企業によってマーケティングと捉える範囲が違うので、それを理解しないまま仕事をすると、話がかみ合わず悩んでしまう」と山口氏。

 これまでマーケティングは、組織や部署ごとに細かく考えられがちだった。例えば、マーケティング部は市場や顧客を理解すること、商品企画部は消費者のニーズを考えて形にすること、宣伝・PR部は効果的な販促のことを、それぞれマーケティングと呼びがちだ。さらに現代においては、商品やサービスの販売後に、顧客情報を管理し、顧客に合わせた個別アプローチで満足度を高める施策もマーケティング。最近では、幅広い意味でマーケティングを捉える例も増えており、立場によってマーケティングの考え方はバラバラになっているのだ。

■マーケティングの理解は混乱しやすい
マーケティングといっても、人や企業によって捉え方はさまざま。汎用性が逆にコミュニケーションを複雑化している ※山口氏の資料を基に制作。図中の「営業」は販売チャネルへの営業を、「接客販売」は販売チャネルでの接客販売をさす
マーケティングといっても、人や企業によって捉え方はさまざま。汎用性が逆にコミュニケーションを複雑化している ※山口氏の資料を基に制作。図中の「営業」は販売チャネルへの営業を、「接客販売」は販売チャネルでの接客販売をさす

 「最初の2~3年は自分の視野が狭くて、考え方の違う人に対していらだちを覚えることもあったが、その後、自分がバカだったと気づいた」と山口氏は振り返る。1つだけ正しい範囲と定義があり、全員がそうあるべきという考えは、もはや現実的でない。「全員の認識がそろっていないことを前提とし、相手のマーケティングへの考えと視界を理解した上で、それに合わせてコミュニケーションする視点を忘れないでほしい

誤解2 勉強した正論で相手を説得できる

 勉強熱心な人ほど陥りがちなのが、学んできたことが実践でそのまま使えるという誤解だ。

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