マーケティング1年目の集中講座 第4回

生活者のインサイトをどう見つけるか――。インサイト探しは、マーケターにとって最も重要なスキルの1つ。博報堂執行役員・エグゼクティブクリエイティブディレクターで博報堂ケトル(東京・港)取締役・編集者の嶋浩一郎氏は、インサイト探しのコツは、「微細な変化に気付けるようになること」だという。実は、この変化に気付くためのトレーニングは、誰でも普段の生活からできる。嶋氏が実践する、生活者インサイトを探るためのトレーニング方法を紹介しよう。

嶋氏が実践する、生活者のインサイトを見つけるための習慣とは?
嶋氏が実践する、生活者のインサイトを見つけるための習慣とは?
嶋氏流、「インサイトの見つけ方」のコツ
  • 街中で見かけた「変なことをしている人」をメモする
  • 「変なこと」=違和感の正体はどこにあるのか、抽象化(言語化)する
  • ヒット商品の「ヒットの要因」は何か、時流に合わせて考察する(抽象化する)

 嶋氏には、習慣がある。街中で見かけた、「変なことをしている人」をメモするのだ。例えば、「電車の中で靴を脱いでいるビジネスパーソン」。嶋氏は直近1年間で、同様の行動をしている人を2人見かけたという。嶋氏はそこで、「変な人がいた」では片づけない。常にその行動を「欲望」と結び付けて考える。

 「これはどのような欲望の発露なのか」――。欲望とはすなわち、新たなヒットを生み出すインサイトとも言える。「マーケターはまだ表に出ていない欲望を相手にする仕事」(嶋氏)。だからこそマーケターは注意深く観察し、そこにどのようなヒントが隠れているかを探り当てる必要がある。

 嶋氏が日々書きためているメモは、アイデアの源泉だ。嶋氏が実践しているインサイトの発見法は、新人でもすぐにまねできる。ぜひ最後まで読んで、今日から取り組んでみてほしい。

嶋 浩一郎 氏
博報堂 執行役員/博報堂ケトル 取締役 クリエイティブディレクター 編集者
1993年博報堂入社。コーポレート・コミュニケーション局で企業のPR活動に携わる。01年、朝日新聞社に出向。スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年に博報堂刊『広告』編集長を務める。04年、「本屋大賞」立ち上げに参画。現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年、既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。カルチャー誌『ケトル』の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長などメディアコンテンツ制作にも積極的に関わる。12年、東京下北沢に内沼晋太郎氏との共同事業として本屋B&Bを開業

「最近抱いた違和感」を書き出してみる

 嶋氏流のインサイト発見法は、大きく分けて2つある。1つ目は、世の中でヒットしている商品があれば、「なぜ今この商品はヒットしたのか」、つまり時流に合わせて「ヒットの要因」を分解し、考えること。ヒットから逆算してインサイトを探り当てる手法とも言える。もう1つは、街中で見かけた「変(不思議)な行動をしている人」をメモし、「変」の正体を突き止めるために抽象化(言語化)することだ。

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