「スリーコインズ」や「チャオパニック」「ミスティック」など約50のブランドを展開するパルグループホールディングスは、オンライン接客サービスの「スタッフスタート」を活用し、成果を上げている。同社のキーパーソンは、執行役員でWEB事業推進室室長とコミュニケーションデザイン室室長、プロモーション推進部部長を兼務する堀田覚氏だ。
パルグループHDがスタッフスタートの採用を決めた2017年当時、プロモーションなどを中心としたマーケティングの切り口でデジタル活用を推進しながら、ECも強化することが、堀田覚氏のミッションだった。モデルやインフルエンサーなどの“タレント”をキャスティングしてECやSNSのコンテンツを制作することも多々あったが、「すでにリアル店舗で培ってきたお客さまとのつながりや、それを生み出している店舗スタッフというアセット(資産)を活用することの重要性に気付いた」という。店舗スタッフのインフルエンサー化だ。
彼女ら、彼らが頑張ることでインセンティブを獲得して収入が増え、SNSフォロワーも増えたら、個人と会社の資産になり、どちらにとってもハッピーになる。本人たちもSNSの活用方法が学べるし、残念ながらもし何らかの事情で辞めるとなっても個人でフォロワーをそのまま持ったまま次のステージで活躍してもらえばいい。
「これからは個人の時代になるという感覚があった。企業自体のプロモーションには限界があり、敬遠される流れもあった。一方、インターネットは個と個のつながりを強化するものであり、中央集権型が崩れて分散型へと移行する胎動を感じていた。これだけたくさんのスタッフがいるのだから、『個』の力、スタッフの力を強みにしたら、会社の成長に貢献して社員に報えるし、愛着心も生まれる。お客さまの課題も解決できる」(堀田氏)
そこで、16年から社員・アルバイト問わず、ショップスタッフ個人がSNS(インスタグラムとZOZOの「WEAR(ウェア)」)の利用を会社に申請し、承認を受けた後、フォロワー数が多いスタッフを表彰する制度を導入。17年からはフォロワー数1万人(一部5000人)を超えたら手当をつけるというスタッフインフルエンサー施策を開始。18年には総フォロワー数が260万人を超え、手応えを感じていた。
ただし、売り上げ貢献など、その正確な効果は分からなかった。インスタグラムはまだストーリーズ機能もなかった時代で、画像にリンクスタンプを貼ることもできず、プロフィール欄に載せたURLからしか自社ECの「パルクローゼット」に飛ばす方法がなかった。そんな中で、スタッフスタートの導入を決めた。
「一番の目的は、スタッフのSNS投稿からECへの導線をお客さまに分かりやすくして、気になるコーディネートや商品からECへつないで買えるようにしたり、逆にECからもインスタグラムに飛び、日常の中でスタッフやブランドに接触してもらえるようにしたりすること。もう一つ、データの利活用を進めて社内で施策の検討をしやすくし、効果的にしたいという思いもあった」(堀田氏)
著者/小野里 寧晃(おのざと やすあき)
本体価格/1700円(税別)
発売日/2023年3月25日
■ Amazonで購入する
スタッフ投稿経由のEC売上高比率は7割と高水準
実はパルグループHDは、アパレル小売りの中でもECへの取り組みは後発だった。堀田氏が14年に入社した当時から数年間、EC売上高は約50億円、EC化率は6%程度にとどまっていた。それが21年度には全社売上高1342億円に対してEC売上高が前期比38%増の328億円、EC化率は24.4%と、短期間で飛躍的に成長した。23年度にはEC売上高500億円、自社ECで250億円の達成を目指しているところだ。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー