ECで月1億円の売り上げをたたき出すスゴ腕店舗スタッフは、なぜ生まれたのか。オンライン接客サービスの「スタッフスタート」がどのような思想でつくられ、進化してきたのか、バニッシュ・スタンダードCEO/代表取締役の小野里寧晃が振り返る。

※本連載は新刊『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ~』(日経BP) ▼Amazonで購入する から、一部を転載したものです
(画像/『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ~』から)
(画像/『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ~』から)

 自社ECサイトで店舗スタッフによるオンライン接客を可能にするサービスである「スタッフスタート」が、導入企業・ブランドに提供する最大の価値は、店舗スタッフのモチベーションを高めながら、「店舗スタッフ起点のOMO(オンラインとオフラインの融合)」を実現し、売り上げを拡大していくことだ。店舗スタッフがオンライン接客をするメリットを分解すると、次の大きく3つの要素に分かれる。

① オンライン上でも店舗スタッフへの共感が生まれる
② お気に入りの店舗スタッフからECで買う「指名購入」が発生する
③ 店舗スタッフにリアルで会うための「指名来店」が生まれる

この3つのサイクルを回してオンライン上でも店舗スタッフのファンを増やしていくこ とで、ECの購買体験はがらりと変わり、リアル店舗での集客にもつなげられる。では、それぞれ解説していこう。

 まずは「①店舗スタッフへの共感」が、なぜ必要なのか。従来のECは商品画像とその説明を掲載するのが一般的だったが、店舗スタッフのコーディネート投稿がお客さまの共感を呼ぶことで、ぐっと購入につながりやすくなる。

 その理由の1つが、「リアリティー」があるということだ。ブランディングを重視するといいながら、モデル、特に高身長の外国人モデルなどに着用させた写真は素敵に見えるけど、お客さま自身が着たときのイメージとは乖離(かいり)しがちだ。それよりも店舗スタッフが着用することで、お客さまは身近さを感じて共感を生むことになる。

 2つ目が「バラエティーの豊富さ」だ。1つの商品でも、その商品を着用してコーディネート投稿している店舗スタッフの数だけお客さまへの提案がある。そのため、「自分もこんな着方をしてみよう」といった共感ポイントが必ず見つかる。そして3つ目が「マッチング」だ。お客さま自身の身長や体形、ファッションやメイクのタイプ、カラー診断などの条件に応じて、お客さまのニーズに合った店舗スタッフ、コーディネート投稿に出会える。

 こうして生まれた店舗スタッフへの共感をベースにして、次に起こる重要なポイントが、「②指名購入」。店舗スタッフのタイプやコーディネートなどを気に入ったら、お客さまは次も同じ店舗スタッフの投稿を見てくれるようになる。EC上でも店舗スタッフ個人にお客さまが付く状態だ。

 インスタグラムから自社ECに飛んでくることもあるし、逆に自社ECのスタッフページに掲載したインスタグラムのアカウントをフォローしてもらうケースもある。単なるファッションの着こなしだけではなく、SNSからそのスタッフの人柄やライフスタイルを知ることで、よりファンになってもらえる。そして、お客さまは「この人から買いたい」と、指名買いをすることになるわけだ。

 実際、スタッフスタートを利用する店舗スタッフの3人に1人が指名購入するお客さまを持っている。こうしてファンが付き、スタッフがインフルエンサー化し、発信した情報に対してアクションを起こしてくれるファンが増えていくことになる。

 そうしてオンライン上でも強固なファンのベースを築くと、お客さまはSNSにコメントをくれたり、ECで購入したりするだけではなく、店舗スタッフに会いに来てくれるようになる。「③指名来店」だ。すでに多くの店舗スタッフは、インスタグラムで出勤簿を提示したり、ヘルプで行く店舗を告知したりと、ファンが来店しやすいよう工夫している。実際、人気の店舗スタッフがヘルプに入った店舗で1日の最高売り上げを更新した例もある。

 つまり、オンライン上でつくったファンとのつながりは、必ずリアル店舗にも還元されるのだ。特にwithコロナの時代には、ウインドーショッピングをしたり、何店舗もふらりと入って商品を探したりするよりも、事前に行く店を決めて訪問することが多くなっている。指名来店はリアル店舗への集客という意味でも、ファン化という意味でも、より重要さを増している。こうして店舗スタッフのインフルエンサー化を進めることが、OMOを成功させる近道となる。

 ここまで説明してきた3つのサイクルのインパクトは絶大だ。すでにスタッフスタート経由のEC売り上げで1スタッフの最高記録は月間1億3000万円に達している。これは店頭の約100倍もの実績だ。ここまでいかなくても、月間500万円以上のスタッフは731人、月間1000万円以上は235人もいる。店頭に立つだけでは絶対に達成できない売り上げを多くのスタッフがたたき出している。ちなみに、1回のコーディネート投稿経由のEC売り上げは約8100万円が最高記録となっている。

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書名/『リアル店舗を救うのは誰か ~今すぐ「店舗スタッフ」にECを任せよ~』(日経BP)
著者/小野里 寧晃(おのざと やすあき)
本体価格/1700円(税別)
発売日/2023年3月25日

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スタッフスタートが変えた小売り「3つの進化」

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