ソーセージ「シャウエッセン」のパッケージリニューアルに際し、上部の巾着部を“断髪”するキャンペーンを2022年に実施して話題を呼んだ日本ハム。その仕掛け人マーケターである小村勝氏が、次の活躍の場として北海道日本ハムファイターズに身を移した。球団社長に就任し、日本ハム流ならではの顧客視点のマーケティング手法を駆使して、プロ野球界を、さらには北海道経済をもり立てていく。弊誌は就任直後の小村氏に単独インタビューを敢行。敏腕マーケターの頭の中をのぞかせてもらった。

事業会社のマーケター出身の球団社長が誕生。小村勝氏は日本ハム時代に仕掛けたキャンペーンをヒットさせたことで知られる。その流儀を今度は球団経営で生かす
事業会社のマーケター出身の球団社長が誕生。小村勝氏は日本ハム時代に仕掛けたキャンペーンをヒットさせたことで知られる。その流儀を今度は球団経営で生かす

 北海道日本ハムファイターズの球団社長に2023年3月17日、日本ハムのマーケティング畑出身の小村勝氏が就任した。ホーム球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を擁する施設として誕生したばかりの「北海道ボールパークFビレッジ」を運営するグループ会社、ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの社長にも同日就任。今後は球団だけでなく、球場についても経営をかじ取りする重責を担う。

 小村氏は日本ハム時代、世の中を驚かせるマーケティング手法を実践したことで知られる。その流儀で、ファイターズとプロ野球の世界をどう変えていくことになるのだろうか。

判断の最終基準は「お客様にどう思っていただけるか」

──パッケージの断髪キャンペーンなどで、世の中で話題を呼んできました。アイデアを思いつく原点は、どこにあるのですか。

 私のマーケターとしての原点は、日本ハムに入社してすぐに来る日も来る日もひたすら担当スーパーなどを巡り、店舗担当者やお客様と会話してその声を営業として聞き続けたことにあります。日本ハムは、メーカーとして小売店と直接取引する態勢を古くから取っており、若い社員のうちから特定エリアを割り当て、任されます。新商品の売り込みから売掛金の回収まで行い、私も当時、複数チェーンのスーパーを50〜60店担当して毎日のように回りました。

 その企業文化があったおかげで、看板商品「シャウエッセン」などのハム・ソーセージといった商品がお金に変わる瞬間に日々立ち会うことができました。数百円の商品を売る苦労はもちろんのこと、自社の商品が今なぜ売れているのか、逆にどうして売れていないのかといった肌感覚を、顧客との接点を通じて学んだんです。このときにすり込まれたことは、今も何かを決断するときの基準になっています。その選択をすることによって、お客様にどう思っていただけるか。いわば行動指針のようなものです。

小村勝氏
北海道日本ハムファイターズ社長
1966年1月25日生 大阪府出身。88年8月日本ハム入社、2015年4月加工事業本部フードサービス事業部関西フードサービス部長、18年4月加工事業本部マーケティング推進部長、22年3月北海道日本ハムファイターズ取締役、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役、22年4月日本ハム経営企画本部北海道プロジェクト推進室長。23年3月から現職。

──なるほど。とはいえ仕掛けるタイミングも重要です。世の中のトレンドを読み切るコツのようなものはあるのでしょうか。

 よく情報は鮮度が命の“刺し身”だと言われますが、全くその通りだと思います。ただマーケターにとって重要なのは、フィルターなしの生の一次情報を仕入れられるかどうかです。最近は、センターで一括納品するスーパーが多く、営業担当者はバイヤー経由で店舗の状況をヒアリングしたり、パソコンをたたいてPOS(販売時点情報管理)データを調べたりすることが多くなりました。もちろんそれは欠かせないことですが、あくまで二次情報です。

 どういう状況で自社の商品や競合商品が今売れているのか、現場を踏んで一次情報を仕入れる。新商品が売れそうなのか、そうでないのかが事前にぱっと分かるまで足を運ぶ。アナログかもしれませんが、マーケターとして競合に先んじるということは、そういうことではないでしょうか。

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