消費者がある製品やブランドに対し、どの程度買おうと思っているかの度合いを表す「購入意向」。マーケターがその調査を行うのは、結果を分析し、将来の選択行動を予測したいからに他ならない。しかし、実際は将来の変化をつかむのにあまり役立たないことが多い。なぜそうした“落とし穴”にはまるのか、エビデンスを基に解説する。
みなさんが「購入意向」を測定するのはどのような場合でしょうか。例えば、コンセプトテスト(新製品などのアイデア案が複数ある場合、どれが最も受け入れられるか調べる調査)や満足度調査で、購入意向について聴取することがあるでしょう。もしくはトラッキング調査(同じ調査内容で定期的にアンケートを繰り返し、その変動を分析する調査方法)で、使用実態(U&A)調査や市場環境調査の一環として調べるかもしれません。いずれにしても、将来の購買量やブランド選択の変化を推し量るために現在の意向を聞く、という使い方をすることが多いかと思います。
しかし、態度や意向から将来の行動を予測しようとするタイプの分析はあまりうまくいきません(Kraus, 1995; Wright & Klÿn, 1998)。なぜなら、態度や意向は「将来の変化」ではなく「過去の傾向」を表しているにすぎないからです。つまり購入意向が先ではなく、購買行動が先なのです(Sharp, 2017)。これが本当だとしたら、上記のような購入意向の使い方はマーケターを誤った方向に導いてしまいますね。どうしてこうなるのでしょうか。
「聞きたいこと」と「聞いていること」が違う問題
購入意向はアンケートなどで「とても買いたいと思う」~「全く買いたいと思わない」のような尺度で測定されることが多いかと思います。その根拠になっているのはTheory of Reasoned Action(Fishbein & Ajzen, 1975)やTheory of Planned Behavior(Ajzen, 1991)だといわれています。前者は、人の行為は意思のコントロール下にあり、行為への態度(望ましいか)と主観的規範(そうすべきか)の2変数によって説明されるというモデルで、後者は、その2変数に加えて知覚行動制御(行動を起こすことの難しさ)が影響すると考えるモデルです(田中、2008)。自分がそうしたいと思うか、社会的にそうすべきか、容易に行動に移すことができるかといった変数が意図を形成し、その意図が行動に影響を与えると考えるわけです。
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