スタバ出店戦略の極意 第4回

創業40年となる老舗の喫茶店が、スターバックスに生まれ変わった。ただスターバックスの新店舗をつくったわけではない。古くから地域に愛されてきた店の可能性を未来に広げるために、設計担当者は何を残し、何を変えたのか。

店舗開発本部店舗設計部の及川和茂氏(写真/小野さやか)
店舗開発本部店舗設計部の及川和茂氏(写真/小野さやか)

 地域住民に40年間愛されてきた喫茶店が2021年、「スターバックス コーヒー 西東京新町店」として生まれ変わった。かつての店の名は「珈琲館 くすの樹」。樹齢約300年の大きなクスノキが敷地内にある、三角屋根が目印の喫茶店だった。コーヒー好きのオーナーが、親子2代にわたり営んできたが、高齢化を理由に建て替えを検討するにあたり、今後も地域の人々に長く愛される店をとスターバックスに相談を寄せたという。

 スターバックスの直営店には、自社が土地を含めて建物投資をする場合と、土地の所有者(オーナー)が出店場所を提供し、オーナーが建物投資をする場合と大きく2種類がある。「西東京新町店」は後者だ。JR中央線武蔵境駅から徒歩20分、五日市街道沿いにある店の周りは住宅に囲まれ、付近には大学や公園がある。オーナーからの依頼を受け、出店が決まると、設計担当で店舗開発本部店舗設計部の及川和茂氏は現地に出向いた。

 「ここを完全に、スターバックスの店舗として建て替えることもできる。だが、オーナーの話を聞き、大切にしてきた『珈琲館 くすの樹』の記憶をどう残していこうかと考えた」(及川氏)。この思いは設計を考える際のベースとなった。古くから通っている常連客には以前と変わらず来店してほしい。さらに新しく来店する人にも心地よさを感じてほしい。設計においては、「誰もが居場所やつながりを感じるような店をイメージした」(及川氏)。立地を考え「自宅のリビングの延長のような雰囲気のお店」を目指したという。

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