スタバ出店戦略の極意 第3回

時代のニーズに合わせ、常に店舗デザインを進化させているというスターバックス。ここ数年では、事前注文決済サービス「モバイルオーダー&ペイ(MOP)」の導入に伴い、動線設計を変更した。変更後、来店客が直感的に動けるようにした工夫とはどんなものだったのか。最近の店内設計の「変化」と理由について、担当者に聞いた。

 「赤いランプの下でお待ちください」。スターバックスでドリンクをオーダーしたあと、パートナー(従業員)にこう言われた記憶のある読者も多いのではないだろうか。

 実はスターバックスの店舗設計は2015年まで、世界的に同じ「パターン」が導入されていた。世界各地の店舗において「ランプの下」で商品を手渡ししていたのだ。家具なども統一基準で展開してきた。店舗は増え続けたが、その結果、どの店舗でも「クッキーカッター」のように、同じ「型」の体験が並んだ。そこで「それぞれの地域文化に寄り添う豊かなサービスを提供するため、15年頃から、米国、欧州、アジアの各リージョン(地域)で共通のデザインベースを持ち、ローカライゼーションしていく方針に変わった」と店舗開発本部 店舗設計部の江藤希理子部長は語る。

店舗開発本部 店舗設計部の江藤希理子部長(写真/小野さやか)
店舗開発本部 店舗設計部の江藤希理子部長(写真/小野さやか)

 では、日本国内では、どんな意図で「ローカライゼーション」が手掛けられているのか。鍵を握っているのがコンセプトデザイングループだ。

スターバックスが手掛けた店舗デザインの変化

 スターバックスのコンセプトデザイングループは、店づくりの基本となる考え方や、その考え方に基づいた「スタンダードアイテム」と呼ばれる家具などの開発、動線の構築などを手掛ける。同グループ内のコンセプトデザインアンドディベロップメントチームのマネージャーを務める有田花絵氏は「お客様の体験に一番近い家具とレイアウトを店舗デザインに反映する」と語る。

 自宅でも職場でもない、リラックスできる第3の場所――。スターバックスでは、日本初出店以来、「サードプレイス」という概念を提唱してきた。居心地がよく、日々の暮らしの中で人々の心を豊かで活力あるものにする居場所を追求するにあたり、家具はもっとも身近で重要な体験だ。

 新型コロナウイルス禍で、リモートワークやテークアウトが増えるなど、人々の働き方や生活スタイルは大きく変化した。こうした中、顧客の心理的変化や利用状況の変化に合わせ、「スタンダード」も進化している。最近の3つの変化を教えてもらった。

店舗設計部コンセプトデザインアンドディベロップメントチームのマネージャーの有田花絵氏(写真/小野さやか)
店舗設計部コンセプトデザインアンドディベロップメントチームのマネージャーの有田花絵氏(写真/小野さやか)

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