
駅の周辺、ショッピングセンター、ドライブスルー、サービスエリア、公園など、出店場所に合わせて様々な店舗デザインを手掛けるスターバックス。設計を担当しているのは、社内のデザインチームだ。スターバックスらしい店舗デザインの秘訣は、デザインを始める「前」にあった。
スターバックスには、どの部署の誰であっても、全員がこれに基づいて考え、行動し、迷ったら立ち返る軸がある。ミッションだ。
「人々の心を豊かで活力あるものにするために―ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
出店場所が店舗開発部で決定したあと、バトンを受け取る店舗設計部の36人のメンバーも、ゴールをここに据えている。「コミュニティーとつながり、そのコミュニティーが豊かになるという願いを具体的に表現し、デザインに落とし込む」と店舗開発本部店舗設計部の江藤希理子部長は語る。
店舗設計部は2つのチームに分かれている。その理由もミッションの体現にしっかり軸足を置くためだ。まず上流にあるのが、「コンセプトデザイングループ」だ。店舗デザインの「基本の考え方」を決め、内装で使用する色彩や家具などを開発、基本となる配置のルールなどを議論していく。多様な店舗デザインを展開するスターバックスで、どの店に行っても同じようなサービスを受けられ、同じような体験ができる理由はこの「基本的な考え方」にある(第3回で紹介)。
そして、「基本の考え方」に沿って、一軒一軒の店舗をデザインするのが、「リージョンデザイングループ」だ。店舗デザインには、テーラーメイドで建物全体の店舗デザインを考える「カスタム建築」と、ある程度決まったルールに基づいて設計する「標準建築」とがある。公園店舗など特殊な立地に出店する場合は、テーラーメイドで店舗デザインを考える。標準のフォーマットがあるのは、安全計画に基づいた外構の設計(動線の計画)や注文デバイスの設置などが必要なドライブスルーの場合などだ。
出店場所が決まると、リージョンデザイングループの担当者と営業部、建設部の担当者らで土地や施設の情報詳細を共有する。周辺環境を含め、「その場所(店)が置かれている状況」を読み解くことから「スターバックスらしい」デザインづくりがスタートする。
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