
日本コカ・コーラは自動販売機と連携して利用するスマートフォン向けアプリ「Coke ON」の利用者拡大策として、コード決済サービス「PayPay」と連動したキャンペーンを積極的に実施している。2022年からはポイント還元キャンペーンに加え、クーポンを組み合わせることで多面的に新規顧客を開拓している。キャンペーン設計などを工夫することで、ポイント目的の単発利用にとどまらず、継続的にアプリを利用するロイヤルティーの高い顧客の獲得を実現している。
「PayPayは利用者が多く、Coke ONにとっても新規顧客の開拓余地が大きく残された空白地帯だ」
日本コカ・コーラのベンディング事業部の永井宏明シニアマネージャーは、マーケティングプラットフォームとしてのPayPayの可能性をこう語る。Coke ONとは同社が展開するスマホアプリ。対応する自販機とアプリを連係させることで、商品の購入時にデジタルスタンプがたまる。スタンプをためることで、商品が1本無料になるチケットが付与されるなど、さまざまな特典を得られる。
日本コカ・コーラは自動販売機を直営の“店舗”と捉え、デジタル技術を組み合わせることで新しい価値を生み出す戦略を進めてきた。Coke ONは、自販機のデジタル化を促進する重要なサービスだ。購入時には各自販機の商品情報と連動して、スマホの画面上に疑似的に再現される。購入したい商品をタップして、支払いすると自販機に手で直接触れることなく購入できる。日本コカ・コーラはアプリを通じて、自販機の利用データを取得することで、小売りを通じて商品を販売するメーカーでは手に入りにくかった顧客の実購買データを蓄積できる。
▼関連記事 日本コカ・コーラがなぜサブスク 3700万DLのCoke ONアプリ戦略自販機の利便性を高めるため、日本コカ・コーラはCoke ONを交通系ICカードや流通系電子マネーなど、さまざまな電子決済サービスに対応させてきた。コード決済の導入にも積極的な一社だ。Coke ONは2019年10月1日から、PayPayに対応し、自販機で利用可能にした。
「5000万人」という大きな余白に可能性
Coke ONのダウンロード件数は4400万を超え、それそのものが巨大なプラットフォームともいえる存在になっている。それでも、「PayPayの利用者にはまだまだCoke ONを利用したことがない層が眠っている」と永井氏はいう。その根拠はキャンペーンの成果にある。日本コカ・コーラはPayPayの導入後に始めたキャンペーンを、現在も継続的に実施しているのは、獲得効率が維持できていることが最大の理由だ。
「PayPay経由の新規顧客の獲得効率は非常によい。5000万人という巨大な顧客基盤を持つため、まだ余白が多く残っている。顧客獲得の効率は下がっていないため、継続的にキャンペーンを実施している」(永井氏)。それが冒頭のPayPayを「空白地帯」と表現する言葉にも表れている。
そうした余白を狙ったキャンペーンを展開するうえで、より効果的に活用するための工夫を施す。まず、ポイント還元キャンペーンとクーポンという2つの施策の目的の明確化だ。PayPayの黎明(れいめい)期こそ、高還元率などお得さを強烈に打ち出したキャンペーンが注目を集めていたが、いまや5000万人が利用する主要な決済手段の1つだ。サービスが定着する中で、必ずしも強い刺激を与え続けなくても顧客を獲得できるようになっているという。
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