※日経エンタテインメント! 2023年2月号の記事を再構成
BTSが所属するレーベルなどを擁するHYBEが仕掛ける“日本発”の9人組グループ「&TEAM」が、2022年12月7日にDebut EP『First Howling : ME』でデビューを果たした。活況を呈する国内ボーイズグループ市場に良質な刺激をもたらすであろう要注目グループだ。
2022年12月7日に「&TEAM(エンティーム)」がリリースしたDebut EP『First Howling:ME』は、Billboard JAPANの総合アルバムチャート「HOT Albums」で首位を獲得。華々しいスタートを切った。
彼らはHYBE LABELS JAPANに所属する9人組。オーディション番組「&AUDITION -The Howling-」を経て誕生したが、うちEJ(ウィジュ)、K、NICHOLAS、TAKIの4人は、ENHYPENを生んだ超大型プロジェクト「I-LAND」参加メンバー。「&AUDITION」はこの4人を「デビュー組」とし、新たなメンバーを選ぶために始まり、チームワークにプライオリティーを置いたオーディションだった。9月3日のファイナルで選ばれたのは、FUMA、YUMA、JO、HARUA、MAKIの5人。ここから9人の「&TEAM」がスタート。オーディション期間を共にしてきたこともあり、結成直後から単なる仲の良さだけでなく、チームのためにコミュニケーションを重ねる意識の高さと絆が垣間見える。
HYBE流ローカライズの行方は?
日本でも近年、様々な事務所から新たなボーイズグループがデビューしているが、&TEAMは全く新しいグループとして大きな可能性を秘めている。
1つは、日本では成長を見守ることも楽しみとされるアイドルグループが多いなか、&TEAMはK-POP流に完成度の高いレベルでのデビューであること。これは特に近年デビューした、歌やダンスのクオリティーを真摯に追求するグループにとっても、確実に刺激になると考えられる。
2つ目が、避けては通れない“BTSの後輩”という肩書きだ。恐らくHYBE LABEL JAPANが初めて放つグループでありながら数々の音楽番組に出演できるのは、事務所の実績があるから。もちろん、楽曲や振り付けのクオリティーの高さもありながら、歌やパフォーマンスの力、キャラクターの魅力などによってファンを拡大しているのは彼ら自身ではある。12月17日現在、各SNSのフォロワー数・登録者数は、TikTok64.9万人、YouTube48.4万人、Twitter22万人と、すでに日本国内のボーイズグループの中ではトップクラスの数字を獲得している。
3つ目が、グローバル市場との近さ。グローバルへの拡大のノウハウを知るHYBEの今後の動きは、非常に興味深いところだ。「&AUDITION」ファイナルやデビューショーケース、&TEAMのMVは、7000万人近い登録者数がいるHYBE LABELSの公式YouTubeチャンネルから配信、12月13日には韓国の主要音楽授賞式の1つである「2022 Asia Artist Awards」に出演するなど、スピーディーなグローバル展開を見せている。
拡張していくユニークな世界観
加えて、もう1つ興味深いのが楽曲やMV等で見せる世界観だ。HYBE所属のアーティストの作品は、特にMVにおいてファンが考察や謎解きを楽しむ側面があるが、&TEAMにもその要素は引き継がれた。「&AUDITION」から始まっていたオオカミのコンセプトは『Under the skin』のMVにも見られ、さらに、12月5日に公開されたExtended.verでは、EJとKが出演していたENHYPENの『Drunk-Dazed』(21年)のシーンとの共通性が明確になった。そして、翌6日に公開されたWebtoonとWebノベルのHYBEオリジナルストーリー『黒の月:灰色の都市』へとつながり、物語は補完されていった。この作品は、互いに異なる9人が出会い、1つの“人狼兄弟”に成長する物語。リアルとファンタジーが作品を媒介に拡張する展開は、既存のHYBEアーティストファンを巻き込みながら、新規に訴求するブースターとなりそうだ。
(写真/中川容邦 スタイリスト/YUIKO IIZUKA ヘアメイク/AKANE KOMOTO)