「note」「Discord」マーケティング 第10回

SNS(交流サイト)データから見る「Z世代の注目企業2022」のひとつに名を連ねるのが、食品や医薬品の機械を製造するイシダテックというメーカーだ。静岡県焼津市にある中小企業で、お世辞にも知名度があるとはいえないが、noteを採用目的で積極的に活用し、Z世代とのタッチポイントを増やしている。

「イシダテックをもっと知ってほしい!」。この思いから、noteをスタートさせた
「イシダテックをもっと知ってほしい!」。この思いから、noteをスタートさせた

 ゴールドマン・サックス、ヤフー、リクルート、富士通、LINE、国家公務員。名だたるこれらの企業や組織に共通するのは、SNSデータから見る「Z世代の注目企業2022」に選ばれたこと。SNSの分析を通した採用マーケの支援を行うNo Company(ノーカンパニー、東京・港)が2022年12月に発表した。Facebook、Twitterにおいて、「いいね」「コメント」などのアクションの総量を計測し、注目度を順位付け。その数が同程度だったのが上記の企業や組織だ。

 同じ注目度のカテゴリーの中に、イシダテックという見慣れない企業が名を連ねる。静岡県焼津市にある1948年に創業した中小企業で、食品・医薬品に関連する機械をオーダーメードで製造するメーカーだ。お世辞にも知名度があるとはいえないイシダテックが、なぜ大手企業に並んでZ世代に注目される企業の仲間入りをしたのか。その理由が「note」での発信にある。

 イシダテックは「自社を知ってもらいたい」という思いから、2021年8月10日にnoteをスタート。それから毎週水曜日に記事を1本ずつ公開し続けている。記事のテーマは、社員インタビューや地元のイベント紹介の他、社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを紹介したり、大掃除の過程を見せたりとさまざま。社員も知らないようなマニアックな内容も包み隠さず公開することで、「これを読めば、イシダテックがどんな会社かがおおよそ分かってもらえる」と話すのが、ほぼすべての記事を担当する総務部の小山和希氏だ。

イシダテックのnoteのトップページ
イシダテックのnoteのトップページ

 イシダテックのnoteは、スタートから約1年半の総アクセスが11万を超え、好きな記事に付ける「スキ」の総数は5000を突破。さらに、記事の読了率が平均30%弱もあるのが特長だ。大企業のような知名度は無く、かつ文字数が4000を超える長文記事も多いことを考えると、本当にイシダテックが好きなファンが読んでいると言ってよいだろう。

 noteに注力する以前、社内の人から見たイシダテックを表すキーワードは、「きらきら感が無い」「典型的な昭和の企業」「知名度が無い」「地方のBtoBの中小企業」だったと小山氏は苦笑する。これらのワードからは、トレンドに敏感なZ世代とは縁遠いように思える。どうやって彼ら・彼女らに興味を持って持ってもらえるよう変貌を遂げたのか。

 イシダテックがnoteを始めた目的は、採用に力を入れるためだ。特に、機械や電子系の専門教育を受けた高等専門学校(高専)の人材を希望しているものの、近年の応募者は0。「会社が全然知られておらず、学校に求人票を出しても読み飛ばされてしまっている状態」(小山氏)。イシダテックは認知度の低さに危機感を持っていたという。

 「Google検索で『イシダテック』を検索しても、企業のホームページ(HP)や求人情報しかヒットしなかった。Z世代は応募する前に、どんな企業かを絶対にググる。検索にヒットするコンテンツをつくらなければ」と思い立った。イシダテックのHPの役割は、基本的には企業に向けた事業説明のプラットフォームであり、一般的な消費者を意識して制作していなかった。月間の訪問者数も1000~1500と多くはないため、一人でも多くの採用希望者の目に留まるプラットフォームの立ち上げが急務だった。

 noteを選んだのは、「記事が資産(ストック)になると考えた」ためと小山氏。

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