
ゲーム利用者向けSNS(交流サイト)「Discord」でコミュニティーをつくり、顧客とのつながりを深めるという動きは海外のファッションブランドが先行した。海外でのDiscord活用の現在地はどうなっているのか。会社の理念を守るためにFacebookやInstagramの更新を停止するという取り組みで注目を集めた、コスメブランドの英ラッシュに聞いた。
Discordは、若者がゲームについて語り合うだけでなく、NFT(非代替性トークン)などの新技術を議論する場としても使われてきた。新しいカルチャーに敏感な若者たちが集まるコミュニケーションツールとしての可能性が注目され、22年前半にはイタリアのグッチ、ドイツのアディダス、日本発のブランド「KENZO」などがDiscordのサーバーを立ち上げている。
21年には、イタリアのグッチ、英バーバリー、フランスのルイ・ヴィトンなどの高級ブランドなどがNFTを発行する取り組みが広がっていた。Discordはこうした暗号資産(仮想通貨)やWeb3(3.0)といった新技術と親和性が高い。各ブランドがDiscordサーバーを立ち上げたのは、そうしたWeb3トレンドの波に乗ろうとする動きの一環だったと考えられる。
最も活発な動きを見せているのがグッチの「GucciVault」だろう。約5万人が登録し、バッグなどの新製品、ビンテージ品、関連アートの写真にコメントが付いている。英語の他、中国語のチャットルームもある。一方、自己紹介欄がある程度で、活気のあるやり取りが生まれていないブランドも見られた。率先してDiscordを立ち上げたものの、顧客とつながりを生み出す使い方は、まだ模索が続いているように見える。
Discordをはじめ、SNSなど各種ツールによる顧客コミュニケーションの現在地はどうなっているのか。英国発のコスメブランド「LUSH(ラッシュ)」を展開する英ラッシュのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)、ジャック・コンスタンティン氏に話を聞いた。
メンタルヘルス配慮でFacebookから離脱
ラッシュは21年11月、FacebookとInstagram、TikTokなどからの「サインアウト(更新停止)」に踏み切ったことで話題となった。SNSから離れられなくなるアルゴリズムを意図的につくり出し、ユーザーのメンタルヘルスに悪影響を与えている――。米メタ(旧フェイスブック)の元従業員がそんな内部告発をしたことがきっかけだった。
▼関連記事 パーパス守るためSNSを一時停止 英ラッシュ、15億円の損失覚悟SNSを顧客とつながる重要なマーケティング手段として位置付けている企業は多い。SNSを活用しないという判断は、マーケの常識に照らし合わせると、ありえない。「主要顧客であるティーンエイジャーがSNSからメンタルヘルスについて悪い影響を受けている。そこに加担するのは間違っていると考えた」。SNSから離脱した真意を改めてコンスタンティン氏に聞くと、そんな答えが返ってきた。
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