「note」「Discord」マーケティング 第2回

企業と人のコミュニケーションについて再考する本特集。1本目の記事(総論前編)では、“濃いコミュニケーション”の必要性と、「note」と「Discord」に着目した理由を説明した。2本目(総論中編)では、noteとDiscordを含めたコミュニケーションツールそれぞれの特徴や使い分けのコツ、生活者とつながるために意識すべきことなどを、専門家2人に聞いた。そこから出てきた注目のキーワードとは。

多種多様にあるデジタルコミュニケーションツール。特性を理解しないまま使っていては、生活者に届かないばかりか……(画像/Shutterstock)
多種多様にあるデジタルコミュニケーションツール。特性を理解しないまま使っていては、生活者に届かないばかりか……(画像/Shutterstock)

コミュニケーションツールを「4象限」で分類すると

 まず、主要なSNSとnoteなどのツールの特性について聞いたのは、SNS活用の支援会社コムニコ(東京・港)でコーポレートサクセスチームマネージャーを務める後藤真理恵氏だ。

 後藤氏は、考え方はいろいろあると前置きをしつつ、SNSを以下のように4象限で分類する。縦はコンテンツの流れの速さの違いであり、上に行くほど情報の流れが速い「フロー型」で、下に行くほど流れが遅くたまったコンテンツにも出合いやすい「ストック型」になっている。

■各SNSプラットフォームのすみ分け
コムニコ後藤氏の資料を基に編集部で作成。利用方法によってどこの象限に入るかは変わる可能性があるが一例として
コムニコ後藤氏の資料を基に編集部で作成。利用方法によってどこの象限に入るかは変わる可能性があるが一例として

 一方の横はつながる人の属性に関連するもので、右側が現実世界での友人・知人をベースとした「リアルグラフ」、左側がインターネット上で知り合ったもの同士をベースとし興味関心でつながる「バーチャルグラフ」だ。

 noteは、これでいうと縦軸で見ると下側のストック型であり、横軸で見るとやや左側のバーチャルグラフ寄りの中央に位置づけられるという。

 当然ながら、長文テキストをベースとしたnoteは、TwitterやInstagramほど高頻度で更新がされにくい。そのため、新しいものばかりが目立つということはない。加えて、「サイトにランキング機能などもないため、新しいもの主体ではなく過去の記事も含めて読まれる傾向にある」と後藤氏は話す。

 長文のテキストとしてたまっていくため、「SEO(検索エンジン最適化)が利くという点も特徴」(後藤氏)だ。実際、ウェブ検索でnoteの記事にたどり着いた経験がある人も少なくないはず。noteの発表によれば、全体の約4割は検索サイト経由で、3割超がTwitterなどの他のSNSからだという。

 一方、人のつながりで見ると前述のようにnoteはややバーチャルグラフよりの中間的なゾーンにある。FacebookやLINEに比べると、現実世界における友人・知人という関係性でつながっている人が少ないとみられる。また、YouTubeやTikTokほどネット主体の関係性だけでもない。「ビジネスやプライベートでのつながりがある人がnoteでもつながるケースは多いが、ウェブ検索や他のSNS経由での流入が多いことを考えると、同じ興味関心を持った人とネット経由でつながることも想定され、幅広い用途に使いやすい」と後藤氏は話す。

 また、このグラフからは見えない特性として、後藤氏は意外な点を付け加える。それは「穏やかな空間」になりやすいということだ。

 一般的なブログ、特に著名人・有名人が使っている主要な無料のブログサービスは、基本的に広告が表示される。一方のnoteは無料利用でも記事内に広告がない。そのため、コンテンツに集中しやすい環境にある。また、前述のようにランキング付けがないため、「変にバズを狙うような過激な記事があふれにくい」(後藤氏)という。企業がオフィシャルとして“穏やかに”運営するのに向いているのだ。

 一方、DiscordはSNSという視点からこの切り分けで図示するのは難しい。「基本は、つながりのある人がより深くコミュニケーションを取るためのツール。そのコミュニティー属性に応じて(4象限の)どの領域とも組み合わせられる」と後藤氏は話す。リアルかバーチャルかは問わず、つながりをベースとしつつ、そこからより深く、“個室”で話すのがDiscordだからだ。

企業活用で重要な「プッシュ」と「プル」の視点とは

 SNSの分類分けや使い分けに関しては、企業の情報発信やSNSに詳しいnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏にも聞いた。

 徳力氏もまず押さえるべきは、後藤氏と同じく「ストックとフロー」という考え方だという。そのうえで、フロー型のSNSは“おしゃべり”と位置づける。「すぐに流れていく情報、それはまさに会話であり、日々のおしゃべりがテキストや画像主体になったのがTwitterやInstagram、Facebookで、動画になったのがTikTok」(徳力氏)というのだ。

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