「note」「Discord」マーケティング 第4回

熱狂的なファンとともに成長し、LTV(顧客生涯価値)を高めたい。こうしたビジネスパーソンが抱える悩みを解決するツールの新顔が「Discord(ディスコード)」だ。長澤まさみが主演のドラマの主題歌を担当したMirage Collective(ミラージュコレクティブ、以下MC)のコミュニティーは、あえて不特定多数が入ってこない空間を選択し、数千人の熱狂的なファンを生み出した。

Discordのコミュニティーが盛り上がる、12人組のユニットがMirage Collectiveだ
Discordのコミュニティーが盛り上がる、12人組のユニットがMirage Collectiveだ

 隠された真実が少しずつ明らかになるテレビドラマの筋書きのように、主題歌に隠された謎が少しずつ明らかになる――。そんな仕掛けを主題歌に施して話題になったのが、2022年10~12月に放送されたドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系)だ。その主題歌「Mirage」を、音楽プロデューサーのSTUTS(スタッツ)がプロデュースする12人組のユニットMCが担当した。

ドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』
ドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』 ©カンテレ
12人組のユニットMirage Collective(写真/スペースシャワーネットワーク提供)
Mirage Collectiveの12人のメンバー

 Mirageが面白いのは、ドラマの回が進むごとに映像と曲にアレンジが加えられ、隠されていた謎が解き明かされていくこと。第1話の時点では、ボーカルの音声が加工され、誰が歌っているかは隠されていた。そこから第5話で男性ボーカルがロックバンドSuchmos(サチモス) のYONCE(ヨンス)であることが分かり、第6話ではドラマで主演を務める長澤まさみがフィーチャリングとして参加していることも明らかになった。

 「少しずつ謎が解けていくドラマや主題歌と連動し、ファンが熱狂するコミュニティーをつくれないか」と考えた一人が、MCが所属するレーベル「SPACE SHOWER MUSIC」を運営するスペースシャワーネットワークの岡竹翔一氏。その方向性に合致したのが「Discord」だった。なぜDiscordを選んだのか。同氏を含む運営メンバーに、Discord上で話を聞いた。

 Discordは、テキストチャットと音声チャット、ビデオチャットが可能なコミュニケーションアプリ。ゲームや音楽、教育といったカテゴリーの中に「サーバー」と呼ばれるコミュニティーが多数あり、興味のあるサーバーに参加したり、友だちから招待されたりすることで同じ趣味を持つ人同士が交流できる。

DiscordのMirage Collectiveのサーバー画面。左の赤枠の「チャンネル」から、興味のある話題を選択できる
DiscordのMCのサーバー画面。左側の「チャンネル」から、興味のある話題を選択できる。写真では、「NEW_MEMBER」を選択

 TwitterやInstagramといった不特定多数が閲覧可能なオープン型のSNS(交流サイト)とは異なり、LINEのように特定のユーザーや集団に限ったクローズド型であることが特徴。一般的なSNSと比べて利用のハードルは高いが、より濃いコミュニケーションが生まれやすいツールといえる。パソコンのプラウザーやデスクトップアプリなどで動作し、基本的に無料で利用可能。全世界の月間アクティブユーザーは1億5000万人以上といわれ、ここ数年は右肩上がりで登録者数を伸ばしている。

ゲーム業界だけじゃない、事業会社も利用し始めた

 15年に米国でリリースされ、オンラインゲームをプレーする際にプレーヤー同士のコミュニケーションを取るツールとして普及した。ゲームなどのエンタメ企業が先行して活用していたが、近年は一般的な事業会社が社内の連絡に使用したり、オンラインコミュニティーの運営に役立てたりする事例も出てきた。

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