「note」「Discord」マーケティング 第3回

企業活用が広がる「note」や「Discord」に着目し、多様なコミュニケーションツールの企業活用の新常識に迫る本特集。SNSや企業発信の識者2人にそれぞれのツールの特徴や企業活用のコツを聞いた2回目に続き、3回目はファンベースカンパニー(東京・渋谷)社長の津田匡保氏に企業が生活者やファンとつながる際に陥りがちな誤解やワナについて意見を得た。今、マーケで大事にすべきことは“待ち”だと言うその真意とは。

つながることは目的ではない。目的に対してつながる必要があるかどうか、そこを改めて考えたい(画像/Shutterstock)
つながることは目的ではない。目的に対してつながる必要があるかどうか、そこを改めて考えたい(画像/Shutterstock)

 特集1回目と2回目では、noteやDiscordを含めたコミュニケーションツールの特徴の違いやSNSの特性を見た際の活用法について専門家に聞いてまとめた。だが、企業が生活者とつながる際に、より根本的な部分として気を付けるべき“ワナ”がある。そう指摘するのが、ファンベースカンパニー社長の津田匡保氏だ。同社は、ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売り上げや事業価値を高めていく「ファンベース」を提唱しており、多数の企業や団体を支援。企業が抱えるコミュニケーションの課題にも詳しい。

 津田氏が指摘する1つ目のワナは、「つながるためのツールを導入すること自体が目的化してしまいがち」ということだ。

 多種多様なコミュニケーションツールが生まれてきている中、新しいツールの活用事例が目立つ傾向にある。そのため、「『この新しいツールが話題になっているから』という理由で、ツールの導入を相談に来られる企業も少なくない」(津田氏)。その際に津田氏は必ず聞くことがあるのだという。「つながることで、何をしたいのか」ということだ。

 「そもそも前提として、『つながりたい』というのは企業側の希望・都合であり、生活者側もつながりたいと思っているのかは分からない」と津田氏。さらに、睡眠や家事・育児、仕事などの時間を抜いた短い余暇時間を、エンタメやスポーツ、コンテンツ視聴、コミュニケーションなどで奪い合っている状況でもある。「企業がいくらつながる手段をたくさん使って、あの手この手でアプローチしたとしても、生活者はそんなに時間を割けないことを前提として考えるべきだ」(津田氏)と言う。

 目的がないままにコミュニケーションを取れば、響かないだけではなく、むしろ雑音、邪魔になる可能性が高い。「目的の整理が極めて重要」(津田氏)であり、つながるためのツールを導入すること自体が目的化していないか、生活者が何を求めているか、改めて振り返ってみることが大切だろう。

2つ目のワナ、コミュニティー万能説

 2つ目のワナは、「コミュニティーをつくることだけで、ファンを育てて増やせる」という誤解だ。

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