※日経エンタテインメント! 2023年2月号の記事を再構成
2022年はフジテレビ月9にレギュラー出演したほか、人気シリーズ『コンフィデンスマンJP -英雄編-』に前作に続きコックリ役として登場した関水渚。助演として輝く一方、主演やヒロインを務める機会も増え、年々その存在感を増している。23年は、ヒロイン作の『ハマる男に蹴りたい女』(テレビ朝日系)と初の大河ドラマ出演で幕を開けた彼女に23年の目標を聞くと「もっと売れたい」という答えが返ってきた。
2019年、約1000人の応募者の中からヒロインに抜てきされた映画『町田くんの世界』にて第62回ブルーリボン賞新人賞ほか各賞を受賞し、本格的に女優の道を歩み始めた関水渚。22年は、『元彼の遺言状』にてフジテレビ月9出演も果たすなど、飛躍の1年だった。
1月には、長澤まさみ主演の人気シリーズ『コンフィデンスマンJP ‐英雄編‐』にコックリ役として出演し、長澤演じる信用詐欺師・ダー子を助ける重要な役割を担った。コンフィガールことヒロインとして登場し、関水の知名度を一気に引き上げた前作『プリンセス編』(20年)に引き続いての出演だった。
『コンフィデンスマンJP ‐プリンセス編‐』に出てから、「コックリ役の子」と言っていただくことが増えて、すごくうれしいです。人気シリーズの作品に出られるという経験は、とても印象深いものでした。現場は、本当に温かくて楽しいですし、長澤まさみさん演じるダー子とコックリの信頼関係、親子のような間柄も好き。普段も、まさみちゃんのことをお姉ちゃんのように思っていて、プライベートでも相談に乗っていただいたり、遊んでいただいたりしています。
まさみちゃんは、何でも完璧にやり遂げるかっこいい人。それなのに、お芝居はもちろん、すべてに対して「まだまだだ」とおっしゃいます。私から見れば本当に完璧な女性であり女優さんなのに、常に前を向いてまっすぐに突き進んでいる姿が、かっこいいなと思います。
3月公開の結婚式を舞台とした映画『ウェディング・ハイ』で演じたのは、天真爛漫(らんまん)な花嫁・遥。癖の強い招待客を個性豊かなキャストが演じるなか、関水のフレッシュな魅力が際立った。そして最新作は、10月公開の映画『いつか、いつも……いつまでも。』。海辺の町を舞台に人々の温かな交流を描いた同作にて、ひょんなことから主人公とひとつ屋根の下で暮らすことになったヒロイン・亜子を、はつらつと演じている。
最新作の『いつか、いつも……いつまでも。』の撮影は21年の10月。監督が事前に何日間もリハーサルをしてくださったことが思い出深いです。みんなで台本を読み合わせながら、「ここはどういうふうに考えている?」と監督が質問してくださるんですけど、言葉にすることで、より役を理解することができたし、監督とも共通認識を持てた。自信を持って挑むことができました。
私は活発な役をいただくことが多いんですが、本当は怖がりだし、緊張しがちだし、初めましての方と「チームとしてやっていこう」という時には、すごく構えちゃうんです。この作品を元気に演じることができたのは、演者の皆さんの影響が大きいと思います。高杉真宙さんや芹川藍さん、石橋蓮司さんもすごく優しくて、本当の家族みたいになれました。
演技の楽しさに覚醒した夏
快活なイメージのある関水だが、「本当の意味でお芝居を楽しめるようになってきたのはここ最近」だと打ち明ける。「転機は分からない」としながらも、フジ月9ドラマ『元彼の遺言状』への出演が大きかったと自己分析する。同作で演じたのは、好奇心旺盛な令嬢・紗英。負けん気の強い役にピタリとハマり視聴者の注目を集めたが、一方でベテランキャストと自身との実力のギャップに悩む日々が続いたという。しかし、乗り越えたあとにふと、芝居を楽しいと思えたのだという。
『ウェディング・ハイ』の宣伝が始まる春先頃、すごくしんどい時期がありました。人前に出るのが怖かったり、「うまくできない」とばかり考えたり。そのまま『元彼』の撮影に入って、先輩たちの頭の回転の速さを目の当たりにして、ついていけない自分とのギャップに「どうしようどうしよう」と悩んで。世間知らずな紗英という役を読み解くのも難しくって、勝手に1人で暗くしていて。だけど撮影を終えて、夏頃にレッスンでお芝居をした時、ふと「あれ? お芝居、面白いかも」と思ったんです。それまでは、どこかつらい気持ちのほうが大きかったんですけど、急に「楽しい」の割合が増えたんですよね。
『元彼』のあと、なぜそう吹っ切れたのか…今はまだ言語化できないんです。終わってみたら急に「あぁ、今までより楽しくなってる」って(笑)。きっと意識してない間に、綾瀬はるかさんや大泉洋さんをはじめ、皆さんから良い影響を受けていたんだと思います。
場数を重ねたことも大きかったのかもしれません。先輩方やスタッフさんがチーム一丸となって頑張っているなかに混ぜてもらうことで、いろいろなことを吸収できたし、自分の成長も感じています。ちょっとずつ、心に余裕が持てるようになりました。
気付いたら3時間役作りをやってました
芝居の楽しさを再発見し、自身の成長を感じた22年を経て、23年はNHK大河ドラマ『どうする家康』に初回から登場。有村架純演じる瀬名の幼なじみで、芯の強い女性・お田鶴を演じる。同じく1月には、ヒロインを演じるラブコメディ『ハマる男に蹴りたい女』もスタート。藤ヶ谷太輔主演、同名漫画を原作とした本作で演じるのは、バリキャリのズボラ女子・いつか。関水にとって「新しい役」だと、自身も楽しみにしている。
『どうする家康』は、脚本がすごく面白いんです。古沢良太さんが書くキャラクターは、1人ひとりがとても生き生きしていますよね。人の温かさや絆を感じつつ、笑えるところはすっごく笑える楽しい大河ドラマ。7月から撮り始めているんですが、最初に現場に行った時には、セットや衣装を見てすごく緊張しました。『元彼』で共演した野間口徹さんと兄妹役なんですが、「大丈夫だよ」と声を掛けてくださったことが心強かったです。
お田鶴は一生懸命で、みんなの幸せを願っている人。自分の中で「幸せの形」が決まっているからこそ、時には周りとぶつかることもあります。だけど「生きるために強くいよう、負けないぞ」と、頑張っている女性です。
生き抜くためにこれほど必死な女の子を演じるのは初めてでしたけど、私自身に“強い女性”というイメージがあるんだろうなというのは感じますね。そういう意味では、『ハマる男に蹴りたい女』で演じるいつかという役は、私には新しいかも。自分のダメなところを認めるのが怖くて、強くないからこそ、自分の中で作った勝ち負けにこだわる、そんな女の子です。
昨日、気付いたら3時間くらい役作りをやってました。「なんでこの会社に入ったの?」「どういう男の人と付き合ってきたの?」と質問を書き出して、いつかとして答えていくんです。そうすると、自分の中で役が明確になってくるし、相手の気持ちも見えてくる。まだポスター写真を撮影しただけで、撮影はこれからなのですが、面白い作品になると思います。台本のテンポが良いし、2人が成長していく感じが表現されていて、ラブコメでありつつヒューマンドラマみたいな面白さもあるんです。
藤ヶ谷さんは、気遣いの神様みたいな人ですね(笑)。密着してのポスター撮影が初対面だったのですが、私だけタジタジしちゃったら恥ずかしいなと思っていたんです。でも、藤ヶ谷さんが一緒になって「恥ずかしいよねー」と言ってくださったおかげで、場の雰囲気がほぐれました。共演の皆さんとはまだご挨拶しただけなんですが、優しい方が多くて、同じ方向を向いて頑張っていけそうだなと思っています。
目標は「もっと売れたい」
初の大河ドラマにヒロイン作と、絶好のスタートを切る23年。目標を尋ねると、ズバッとした答えが返ってきた。
単刀直入に言うと、もっと売れたいです。「しつこいぐらい、関水渚が出てる」と言われるほど、テレビやCM、映画に出たい。そういうの、はっきり言っちゃいけないみたいな風潮があるけど、私は「夢を持ってます」と、どんどん言いたいです。
私は石原さとみさんの『リッチマン・プアウーマン』(12年)を見て芸能界に入りたいという夢を持ったのですが、さとみさんに夢を与えていただいたおかげで、楽しく生きてこられました。目標があったからつらい時も頑張れたし、いろんなことを乗り越えられた。「女優になりたい」でも「映画を作りたい」でも何でもいいから、ハッピーな夢を持つことができれば、それが生きる糧になると思うんです。私もそんなふうに、子どもたちに夢を与えられるような、みんなが前を向いて生きていけるような存在になりたい。だからもっと丁寧に、もっとお芝居を頑張りたいです。