「ブランディング」の誤解 第6回

「ブランドは後付けにすぎない」。健康食品や化粧品などの独自ブランドをECで展開する北の達人コーポレーションの木下勝寿社長は、こう断言する。同社が商品開発のプロセスで重視するのは「一言で伝わる商品価値の明確化」と「商品の対象となる顧客層に対する街頭アンケート」だ。商品を作ってから、売り方を考える「プロダクトアウト」型では成功確率は低い。顧客を起点とした「マーケットイン」の商品開発と、その商品価値を最大限に伝える販売手法を並行して戦略を立てるのが、顧客に長く愛されるブランドづくりの秘訣だ。木下社長が自社の商品開発プロセスのすべてを明かした。

北の達人コーポレーションの木下勝寿社長。経営戦略やマーケティング戦略を記した著書はどれもヒットしている
北の達人コーポレーションの木下勝寿社長。経営戦略やマーケティング戦略を記した著書はどれもヒットしている
▼前編はこちら 「10年売れる商品」のつくり方 長寿、短命ブランドの違いとは

――商品ができたら、次は売るための施策を考える必要があると思います。まずどこから着手したらいいでしょうか。

木下勝寿氏(以下、木下) 当社では、「商品ができた!さあどう売ろう?」という発想ではありません。企画段階から、「商品」「広告」「LP(ランディングページ)」を並行して考えるようにしています。

 「こういうページで、こんな商品ですと言われたら買うよね」という販売方法と併せて考えます。商品企画とLPはイコールなんです。商品企画段階からLPをつくり、(購入意向の)アンケートを実施しながら、売れそうかどうかを判断します。その結果から、売れそうだと判断できたら具体的な商品開発へと進みます。事前の調査段階で、売れないと判断することも多いので、「商品」から売り方を考えるようなことはありません。

――まだ商品が形になっていないところから、売り方を考え始めるんですね。

木下 そうです。他社でもおそらく同じようなアプローチをしているなと感じる事例はあります。あるサプリメントの開発会社は、ドラッグストアの来店者の目にどう映るパッケージなら売れるのか、という発想に基づいて商品を企画しているのではないかとにらんでいます。ダイエットコーナーに並ぶ無数の商品の中で、どういうパッケージだったら目立つだろうか、それを起点に商品名を決めるなど、マーケットから逆算して作るという発想ですね。

 「商品を開発しましたが、どうやって売ったらいいでしょうか」という相談を受けることがあります。売り方を考えずに作っている時点で、私にアドバイスできることはありません。私たちはどんな商品でも売れる手段を持っているわけではなくて、売れる商品を企画する力がある会社です。

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