2023年2月3日発売の「日経トレンディ2023年3月号」 ▼Amazonで購入する では、「ANA & JAL 最新案内」を特集。国内線・国際線の旅客需要を巡って、日々つばぜり合いを繰り返すANAとJAL。その両社で航空および非航空分野で革新的な新規事業を担当するキーパーソンが初めて顔を合わせた。“共演NG”の2人が、旅のイノベーションの未来を存分に語り尽くした。
※日経トレンディ2023年3月号より。詳しくは本誌参照
ANAホールディングス
未来創造室デジタルデザインラボ チーフディレクター
日本航空
デジタルイノベーション本部イノベーション推進部 部長
──コロナ禍で、イノベーションへの取り組みは大きく変わったのではないでしょうか。
日本航空:斎藤氏(以下、斎藤) 業績が厳しくなり、積極的な投資が難しくなったのは想定外でした。コロナ前は新しいことをどんどんやっていこうという風潮だったのですが……。
いったん歩みは止まってしまったものの、悪いことばかりではありません。日々の業務に追われていたパイロットや客室乗務員らと一緒に、イノベーションについて議論する場を多数持てました。新しい視点でアイデアを考える機会がつくれたのは、大きな収穫でしたね。
いったん立ち止まって、「そもそも航空会社として取り組むべきイノベーションはどうあるべきだろう」と、原点に戻ることができました。全社を巻き込む意味ではよかったのかもしれません。
ANAホールディングス:久保氏(以下、久保) ANAでも同様です。コロナ禍でエアライン事業が大きなダメージを受けましたが、整備士の制服をアップサイクルしたバッグの製作や野菜を産直でお届けする事業、その他新たな分野での取り組みを通じて、本業とは異なる事業を展開できました。これは我々を成長させ、より強い経営体質にしていくことにつながったと考えています。そういう意味でイノベーションという観点では、コロナ禍は追い風だったとも言えます。
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──これは便利だ、ワクワクする、といえる最新の提案にはどんなものがありますか。
久保 当社が開発した「avatarin(アバターイン)」が代表例でしょう。時間と空間の制約に縛られることなく、瞬間移動を実現する新たな旅の技術と言えます。
「newme(ニューミー)」というモニター付きで自走可能なスタンド状ロボットマシンを併用することで、そのマシンを遠隔操作し、自分の代役として旅先で動き回ってもらうというアイデアです。あたかもそこに自分が行ったかのごとくバーチャル旅行体験ができるんです。宇宙旅行も将来的には可能になりますよ。
斎藤 avatarinは、汎用的な活用を試みているところが素晴らしいですね。方向性は少し違いますが、JALもグランドスタッフの代わりに困りごとに応対する「JET」という人型ロボットを羽田空港に導入済みです。遠隔地からグランドスタッフが操作するロボットで、音声で質問することができます。
久保 ロボットはとかく効率化という点が強調されてしまいがちですが、その点JETはおもてなしのシーンでうまく活用されているなと感じます。
我々のavatarinのnewmeも、ロボットの近くにいる人たちと自然な形でコミュニケーションできる点を重視して開発しました。人の目線の高さにモニターを置き、そこに話者の顔が映るようにしたのはそのためです。
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