2023年2月3日発売の「日経トレンディ2023年3月号」 ▼Amazonで購入する では、「個性派ビジホ大研究」を特集。消費者の心をつかむ、とんがった個性派を分析している。今回は4年で50店舗のスピード出店と急成長を遂げているビジネスホテルだ。外観からして既に個性的なこのビジホがどうして人気なのか。その理由を解き明かす。
※日経トレンディ2023年3月号より。詳しくは本誌参照
コロナで変わった新たな旅行ニーズも捉え、僅か4年で50店舗のスピード出店。ビジネスホテル「HOTEL R9 The Yard(ホテル アールナイン ザ ヤード。以下、R9)」が、2018年12月に1号店を栃木県にオープンして以降、高い人気が続いている。旺盛な宿泊ニーズに応えるかたちで23年は春までに14店の開業を予定しており(23年1月末時点)、急成長の勢いが止まらない。
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R9は従来のビジホとは一線を画す「逆張り」戦略を取る。特に大きく変わるのが出店先だ。これまで消費者がビジホに求めてきた立地は、ビジネスでもレジャーでも移動に便利な、全国のターミナル駅や繁華街に近い主要駅があるエリア。どのビジホも最寄駅からのアクセスの良さをアピールしてきた。一方、R9が出店するのはその9割が、交通量が多い幹線道路沿いだ。クルマを使う宿泊者をメインターゲットに据えていて、インターチェンジや工業団地といった人の活発な往来が見込める場所を出店候補として重視。そして徒歩5分圏内にコンビニがあるかといった基準も考慮しながら、出店先を絞り込む。平日は工業団地に足を運ぶビジネス客の連泊需要、週末は周辺の観光目的で訪れるレジャー客需要をカバーしている。そうしたことから、R9の各ホテルの駐車台数は客室数とほぼ同じだ。
4年で50店のスピード展開
23年1月末時点で50店を展開するが、1号店のオープンは僅か4年ほど前の18年12月。宿泊ニーズを掘り起こし、急成長中だ。23年は既に10店以上の開業を予定している。
興味深いことに、郊外のロードサイドに建つR9はこれまで隠れていた宿泊ニーズの受け皿にもなっている。そのホテルの近隣にある実家に盆や年末年始、冠婚葬祭などで帰省する子供が泊まるのだ。「食事や風呂、寝床の準備を高齢の親にさせたくない」「子供や孫の顔を見られるのはうれしいが、迎え入れる準備は少々おっくう……」。そう考えている子供や親は意外に多い。「帰省客がR9を利用するケースは、当社が想定していた3〜4倍に上る。ホテルの建設段階から、『子供たちにはここに泊まってもらおう』と喜んでいる親の声を聞くことも珍しくない」(R9の運営会社、デベロップでホテル事業を担当する執行役員の佐藤将人氏)
コンテナ型の客室は“リッチ”で満足度が高い
郊外の幹線道路沿いに、コンテナ型を採用した客室のホテルを展開中。クルマでのアクセスが良く、客室の設備は豪華、さらに5000円台半ばからのリーズナブルな料金設定で人気だ。
R9は外観も従来のビジホとは大きく違う。広い敷地にスタイリッシュなデザインのコンテナが整然と並び、その一つひとつが客室になる。デベロップはエネルギー事業や建築用コンテナモジュールの開発などが本業で、事業領域の拡大としてこのコンテナ型のホテル事業に進出したのだという。
客室料金に“不相応”なベッド
敷地にはコンテナ型の客室以外に、フロント機能を持たせたコンテナ、駐車スペースのみとシンプルで、ロビーや朝食会場、大浴場といったビジホで見かける付帯施設は無い。こう聞くと、無機質かつ簡素な印象を受けるが、客室は一般的なビジホ水準を上回る充実ぶりで、これも人気の理由の一つとなっている。まず、1日疲れた体を休めるベッドのメーカーは「ザ・ペニンシュラ東京」や「帝国ホテル 東京」など多数の高級ホテルに納入している「シモンズ」だ。「R9の客室は当社サイトでは1人当たり1泊5000円台半ばから販売している。この水準のホテルにシモンズ製のベッドが置かれているのは珍しい」(同)。大きな冷凍冷蔵庫や電子レンジは全客室に完備していて、使い勝手が良い。浴室はユニットバスタイプだが、浴槽は一般的なビジホより若干大きいサイズになっているという。R9全客室の約8割を占めるダブルルームに置かれるマッサージチェアも宿泊客に好評だ。
客室1部屋ごとに独立したコンテナ型にしたことで、新たなメリットも生まれている。コンテナは一定の間隔を空けて設置しているので、「客室内がとにかく静かで、そのメリットは実際に泊まれば体感できる」(同)。客室同士を壁で区切るビジホでは隣室や廊下、あるいは階上からの音が気になることがあるが、R9はその心配がないという。また、客室から一歩出るとそこは屋外という点に、宿泊客は新鮮味も感じているようだ。客室の目の前にある専用の駐車スペースも、外出しやすいと好評。佐藤氏は「エレベーターを使って地上階と客室のあるフロアを行き来したり、長い廊下を延々と歩くビジホ特有の煩雑さを敬遠する宿泊者は多い」と指摘する。
このように、R9はこれまでのビジホのイメージを覆す存在だ。人によって好みは大きく分かれるが、先述の通り、5000円台半ばからというリーズナブルな客室料金に背中を押されて宿泊し、結果、満足してチェックアウトする消費者が後を絶たない。「宿泊者にコスパがいいと思ってもらえる料金設定にしている」(同)といい、客室稼働率は85%の高水準を維持している。リピート率も6割強に達し、会員制度で顧客を囲い込む大手チェーンを除けば突出して高いという。R9と同規模のビジホのリピート率は2割強が相場。リピーターによるクチコミが広がれば、R9は宿泊ニーズを今後もさらに多く取り込むのは必至だ。
レスキューホテルに“変身” 自治体も熱い視線を送る
客室は運べるため、災害発生時は仮設宿泊所などとしても使える。そのため、被災時の対策に取り組む自治体からの関心が高く、誘致の声も多いという。
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