ダイナミックプライシングの新常識 第4回

洗濯物を入れ、料金分のコインを投入。洗濯が終わるのをじっと待つ――アナログなイメージが強いコインランドリー業界において、DX(デジタルトランスフォーメーション)の先陣を切ってきたのが、wash-plus(ウォッシュプラス、千葉県浦安市)だ。2022年1月には洗濯料金にダイナミックプライシングを導入。繁閑の差が大きいという業界の課題に加え、電力需給ひっ迫といった社会課題にも、変動価格で対応の道を探っている。

wash-plusのコインランドリー専用プラットフォーム「Smart Laundry」はキャッシュレス決済が可能。ダイナミックプライシングも導入した
wash-plusのコインランドリー専用プラットフォーム「Smart Laundry」はキャッシュレス決済が可能。ダイナミックプライシングも導入した

アプリでキャッシュレスに対応

 wash-plusは千葉県を中心に、直営20、フランチャイズ21のコインランドリーを運営する企業だ。千葉県内の不動産会社の新規事業としてスタート。2013年6月に1号店をオープンした。

 同社は、コインランドリー業界の中でも早くからデジタル化に取り組んできた会社だ。17年11月には、業務用洗濯機製造を手掛ける山本製作所(広島県尾道市)と共同で開発したコインランドリー専用プラットフォーム「Smart Laundry」をリリース。同業他社に先駆けて、店舗の遠隔管理機能や、業務用洗濯機・乾燥機と連動する顧客向けスマートフォンアプリの提供を開始した。

wash-plusは、千葉県を中心に、直営20、フランチャイズ21のコインランドリーを運営する
wash-plusは、千葉県を中心に、直営20、フランチャイズ21のコインランドリーを運営する

 同社の取締役で技術開発部部長の加藤雅史氏によると、「コインランドリーは非常にアナログ。料金の割り引きもできないし、売り上げは集金時にしか分からない。こうしたコインランドリーのサービスやビジネス自体を変えたいという思いが、当社の高梨(健太郎社長)にあった」という。

 実際、Smart Laundryに対応したコインランドリーのサービスは、従来のものと一線を画している。顧客は専用のスマホアプリを使うことで、来店前に近隣店舗の洗濯機、乾燥機の空き状況の確認が可能。店舗では、洗濯機に洗濯物を入れた後、ディスプレーに表示される2次元コード(QRコード)を読み取ると、クレジットカードやキャリア決済などからキャッシュレスで代金を支払える。洗濯終了時にはアプリに通知が届くので、洗濯物を速やかに受け取れる。

Smart Laundryのアプリで近隣店舗の洗濯乾燥機の空き状況などを確認できる
Smart Laundryのアプリで近隣店舗の洗濯乾燥機の空き状況などを確認できる
Smart Laundry対応の洗濯機はタッチパネルを搭載。希望のコースなどを選択した後、画面右下のQRコードをスマホアプリで読み取れば、キャッシュレスで決済できる。アプリをインストールしていない場合は洗濯機のコイン投入口にコインを入れて現金での支払いも可能。メニューは多言語に対応
Smart Laundry対応の洗濯機はタッチパネルを搭載。希望のコースなどを選択した後、画面右下のQRコードをスマホアプリで読み取れば、キャッシュレスで決済できる。アプリをインストールしていない場合は洗濯機のコイン投入口にコインを入れて現金での支払いも可能。メニューは多言語に対応

 さらに、利用状況に応じた特典もある。Smart Laundryを複数回利用したり、洗濯終了後、3分間以内に洗濯物を取り出したりすると、アプリ内で仮想的な「メダル」がたまる仕組みだ。その数によって割引チケットがもらえるほか、洗濯乾燥機のドアに鍵をかける「ドアロック」機能や、洗濯乾燥機の窓を曇りガラスに切り替えてのぞき見を防ぐ「ブラインドモード」、洗濯機の事前予約機能などが利用できるようになる。

 加藤氏は、「Smart Laundryをリリースした当時はコード決済もほとんど普及しておらず、一部コインランドリーが交通系電子マネーに対応していた程度だった。そんな中、Smart Laundryはアプリを介してキャッシュレスで決済する仕組みにしたことで、1円単位で柔軟に値引きができるようになった。メダル制でリピーターへの還元もできるようになって、サービスの幅がぐっと広がった」と話す。

 店舗オーナーにとっては、ネットワークを介して遠隔からでも店舗管理ができるようになったこと、顧客の利用状況が把握できるようになったことも大きい。「両替機の返金操作やエラーのリセットのたびに店舗に行く必要がなくなった。また、顧客がアプリに登録する際は、生年月日と性別、居住エリアの郵便番号を入力してもらっている。これによって、どんな人が、いつコインランドリーを使っているのかといったデータを蓄積できるようになった」(加藤氏)。こうした利便性が評価され、現在はwash-plusの直営店、フランチャイズを含む280店舗がSmart Laundryを導入。顧客向け専用アプリのダウンロード数も22万を超えるまでに成長している。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
25
この記事をいいね!する