
遅れているとされてきた日本のキャッシュレス普及率は31.5%に達し、政府が目標に掲げる40%の達成がいよいよ視野に入ってきた。ただ、この先も右肩上がりに堅調に社会に浸透するかというと、必ずしも明るい未来が待っているわけではない。今、水面下で店舗を悩ませているのが決済手数料の負担増による経営の圧迫。現場で何が起こっているのか。打開策はあるのか。

「当店では現在各種QRコード決済がお使いいただけますが、年内で使用を停止いたします…」。都内の東京メトロ神保町駅から徒歩3分の場所にある人気カレー店「ボンディ神田小川町店」。同店が2022年12月、Twitterにこんな投稿を行ったところ、1万3000件もの“いいね”がついたほか、ファンからは「これはしょうがないですよね」など様々なコメントが寄せられた。
なぜ同店は、キャッシュレス決済から現金決済へと時代に逆行する選択をしたのか。理由は、毎月スマホ決済事業者に支払う手数料の高さにある。
普及率が31.5%(21年)に伸長し、堅調に社会インフラとして広がっているかに見える日本のキャッシュレス。「だが伸び率としては悪くないが、基本的にはまだ“余白”がかなりある。普及率40%は見えてきたが、今の計算式だと80%などは望めそうにない」(キャッシュレス推進協議会 福田好郎事務局長)

どういうことか。小売店を中心に、スマホ決済やクレジットカードの利用者が増えるにしたがって、決済手数料がキャッシュレスを導入した店舗の経営を圧迫しはじめているのだ。財務総合政策研究所の調査によると、あらゆる産業の営業利益率は平均3.7%。卸・小売業に限ってみれば1.8%。にもかかわらず、スマホ決済を提供する事業者が店舗に求めている決済手数料は3〜4%程度の場合が多い。持ち出しになっているのが実情なのだ。
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