日経クロストレンドは、2023年4月に解禁されるスマートフォン決済アプリへの給与振り込み「デジタル給与払い」について、全国20~50代のビジネスパーソン400人を対象にアンケートを実施。デジタル給与払いの認知度、利用意向などを尋ねた。内容まで理解している人は3割に満たず、利用意向も13.3%と低い結果だった。利用に消極的な理由の記述から、課題と普及に向けたポイントを探る。

デジタル給与払いが解禁されるが、キャッシュレス決済の浸透と対照的に給与所得者の利用意向は高まっていない
デジタル給与払いが解禁されるが、キャッシュレス決済の浸透と対照的に給与所得者の利用意向は高まっていない(写真/Shutterstock)

 企業が、希望する勤務者に銀行口座への振り込みを介さず、スマートフォン決済アプリに給与の支払いができる、いわゆる「デジタル給与払い」。厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会の分科会が2022年10月、制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承したことで、23年4月からデジタル給与払いが解禁される。

 23年4月といえば、もうあと1カ月少々に迫っている。この制度、企業勤務者にどの程度認知されているのか。また導入の暁には、利用を希望しているのか。日経クロストレンドでは、全国20~50代のビジネスパーソン400人にアンケートを実施し、認知度や利用意向、利用したい・したくない理由などを尋ねた。

 調査は、民間の調査会社ドゥ・ハウス(東京・千代田)のリサーチシステム「myアンケートlight」を利用。各年代100人ずつ、男女比半々の割り当てで回答を得た。なお、「キャッシュレス決済に関する調査」「デジタル給与払いに関する調査」といった調査タイトルを立てると回答者が関心層に偏る可能性があるため、本調査は「買い物に関するアンケート」の調査タイトルで実施している。

 まず、キャッシュレス決済の利用動向から。コンビニエンスストアやスーパーなど実店舗で買い物をする際、支払いにキャッシュレス決済(現金以外での支払い)を利用しているかどうか尋ねたところ、「利用することが多い」49.3%、「たまに利用することがある」26.0%と、利用派が4人に3人(75.3%)に上った。利用派の比率はほぼ男女差がなく、利用頻度が高い選択肢「利用することが多い」は男性が53.5%、女性が45.0%だった。特に40代男性で70.0%と高く出ていた。

キャッシュレス決済の利用状況
キャッシュレス決済の利用状況
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 キャッシュレス決済を利用していると回答した301人に対し、何種類のキャッシュレス決済を使っているか尋ねたところ、1種類が32.9%、2種類が27.9%、3種類が21.6%、4種類以上を併用する人も17.6%に上った。男性の場合、5種類以上の併用者が14.1%と2桁パーセントに上る。

何種類のキャッシュレス決済を使っているか(利用者のみ)
何種類のキャッシュレス決済を使っているか

 続いて、よく利用する決済法方法を複数回答可で選んでもらったところ、「クレジットカード」が67.4%、PayPay、LINEペイ、楽天ペイなどの「QRコード決済系」が66.4%で、ほぼ同等だった。次いで、nanaco、WAON、楽天Edyなどの「流通系」34.9%。Suica、PASMOなどの「交通系」34.2%が同水準で並ぶ。クレジットカードとQRコード系の利用率に男女差はほとんど見られないが、男性は交通系の利用が優勢で、女性は流通系が優勢だった。

よく利用するキャッシュレス決済(複数回答可)
よく利用するキャッシュレス決済

 こうした現状のキャッシュレス利用動向を把握したうえで、本題に入ろう。デジタル給与払いはどの程度、認知されているのか。

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