
未来起点×人間中心の考え方は、パナソニックグループの開発体制も変えつつある。特集9回目は、家電などを手がけるパナソニック くらしアプライアンス社を例に見てみよう。商品のデザインや販促、配送などに至るまで、これまでのやり方を抜本的に改革中だ。

パナソニックは調理機器や洗濯機、掃除機、美容機器といった商品を幅広く展開している。そのパナソニックで、商品の質やデザインが次第に変わり始めた。
例えば2023年2月に発売した、調理機器ブランド「ビストロ」シリーズの自動調理鍋「オートクッカー ビストロ」NF-AC1000(以下、オートクッカー)は、パナソニックにとって新規といえる分野となった。
「炊飯器ではなく電子レンジでもない全く新しい商品カテゴリーで、新生ビストロの象徴的なモデル。生活者の新たな価値を考えて商品に反映させている」(パナソニック くらしアプライアンス社くらしプロダクトイノベーション本部デザインセンターAD3部の内山咲子氏)
業界で初めて「圧力」と「かきまぜ」機能を両立した。他社にも同様の電気調理鍋はあるが、パナソニックが目指したのは、最上級の家庭料理ができることだ。
22年9月に発売したヘアドライヤーの「ナノケア」EH-NA0J(以下、ナノケア)は、デザインを大幅に変えた。05年から販売している「ナノケア」シリーズの新製品で最上位モデルだ。独自の「ナノイー」と呼ぶ機能を搭載し、乾かすほかに髪をケアできるドライヤーとして以前から人気のブランドだった。
「これまでもナノケアシリーズを出してきたが、デザインの骨格は変えてこなかった。もともと生活者を念頭に置いて開発してきたので、方向性を見直す必要はなかった。たが今の時代に、そのデザインが生活者の暮らしに最適なのか。もっと暮らしになじむデザインが求められているのではないかと判断し、今回は商品のデザインを変えた」(同くらしアプライアンス社くらしプロダクトイノベーション本部デザインセンターAD2部ビューティー課の根岸美月氏)
すでに成熟している市場と思われたが、新製品のナノケアはヒット商品となり、好調な売れゆき。入荷するとすぐに売り切れる例も出てきた。
生活の豊かさを再定義
こうした商品が登場した背景には、開発に対する考え方を大きく見直したことがある。生活の豊かさとは何かを追求し、生活者に対する提供価値を変えた。生活の豊かさの再定義を行ったのだ。
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