
2021年2月のリニューアル以降、ドン・キホーテのプライベートブランド(PB)「情熱価格」からヒット商品が相次ぎ生まれているのは、単に商品力が強化されたという理由からだけではない。「ダメ出しの殿堂」という独自の仕組みにより、購入者の声を吸い上げて迅速に商品改善を進めやすくする態勢を整えたことも大きく寄与している。その秘密に迫った。
「開け口が見つかりにくい」「意外に汚れやすくて驚いた」「結構な割合で殻が入っていてがっかり」「ちょっと嫌な味がする」「ドボドボ一気に出すぎて使いにくい」──。ドン・キホーテのホームページやスマホアプリにアクセスすると、誰でもプライベートブランド(PB)「情熱価格」に対して遠慮のない意見を自由に書き込むことができることをご存じだろうか。「ダメ出しの殿堂」と呼ぶこの仕組みは、その意見を踏まえて商品改善の方向性を決めるドンキが独自に編み出した改善プロセスだ。21年2月に情熱価格を全面刷新した際に導入し、月替わりで毎月20近いPB商品について、購入者などから意見を募っている。
「情熱価格を冠した商品は、ドンキの所有物ではなく、消費者と一緒になってワクワク・ドキドキする商品をつくりあげるピープルブランド(PB)として位置づけている」。運営会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)でPB事業統括責任者を務める上席執行役員の森谷健史氏は、ダメ出しの殿堂を導入している狙いをこう明かす。
いうなれば、“クレーム上等”の姿勢を打ち出すことで、結果として支持が集まりやすいヒット商品を量産する。そのエンジンの役割を設けたわけだ。もちろん耳の痛い意見も届く一方で、ドンキを愛するファンから直球で投げられる「こうしてほしい」という要望も数多く寄せられる。消費者が望む方向へアメーバのように自在に形を変え続けることをいとわない。それが情熱価格がほかのPBと大きく違う点だ。
同社は「顧客最優先主義をPPIHグループにおける不変の企業原理とする」といった企業原理を掲げる。消費者に寄り添う姿勢は、商品開発の現場でも徹底しており、ヒット商品を生み出す源泉となっていると言えよう。

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