
アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を擁するゴールドウインが、オンラインでの接客とリアルでのイベントの両面を生かしたCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)の向上に本格的に取り組んでいる。2023年春には、よりデータを活用したWeb接客に強化する予定だ。ゴールドウイン販売本部EC販売部長の梅田輝和氏に話を聞いた。
ゴールドウインは2020年10月に、同社のブランドである「ザ・ノース・フェイス キッズ」から、店舗の販売員によるWeb接客を試験的に開始した。妊婦や子育て中の親など、来店機会が減りがちな顧客層に対して、接客の機会を増やすためだ。新型コロナウイルス感染症流行の影響によって来店者数が全体的に減少したこと、それに伴い販売員の手が空く時間が増えたことも大きな後押しとなった。
Web接客には、デジタルマーケティング支援のプレイドが提供するWeb接客ツール「KARTE GATHER(カルテギャザー)」を活用している。23年春に発表予定の「KARTE Jam(カルテジャム)」では、KARTEの中に蓄積されているファースト・パーティ-・データをよりWeb接客で活用できるよう強化する。1月末から、ザ・ノース・フェイスの一部店舗で開始したKARTE Jamのプレテストでは、既に接客後購入に至ったケースもあるという。
ゴールドウインが行うWeb接客の仕組みはこうだ。まず顧客側は、ECサイト上の商品ページで表示される、Web接客のポップアップをタップする。すると今すぐ応答できる店舗のリストが表示され、その中から対応してほしい店舗を選ぶことができる。画面上で「この服のサイズ感を知りたい」「色を確認したい」などとコメントを添えてタップすると、直接営業中の店舗へつながる仕組みとなっている。もし見たい商品が自宅近くの店舗になかった場合でも、在庫がある店舗で接客してもらい、その店舗から自宅近くの店舗や自宅への直送も可能だという。
店舗側には、Web接客ツールのアプリが入っているiPadが設置されている。顧客から入電があったときに呼び出しを示す画面が表示される仕組みだ。「販売員は、店舗に来店した顧客の対応も行う必要があるため、ずっとiPadの前で待機しているというよりは、基本的にWeb接客の入電が入ったときに対応している」と梅田氏は説明する。
顧客体験を向上させる2つのカギ
このWeb接客において、顧客体験を向上させるカギは2つある。1つ目は、一般のビデオ通話と違い、接客ツールが蓄積した顧客データ(顧客が今見ている商品や過去に購入した商品、お気に入りに入れた商品など)を、販売員側のiPad画面上に表示できるという点だ。これによって販売員は、顧客が潜在的に求めている商品を先回りして把握し、「正確に」「迅速に」薦めることが容易になる。データ活用で販売員の接客力を拡張することで、自動販売機のようだったECの購買体験がリアル店舗のように顧客に寄り添うものになる。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。