短尺動画SNS「TikTok」に投稿された動画で紹介されたことをきっかけに、爆発的にモノが売れる現象は「TikTok売れ」と呼ばれる。日経トレンディと日経クロストレンドが発表する「2021年ヒット商品ベスト30」の1位にも選ばれた。TikTok売れは一過性のブームではなく、今もなお新たなヒットを生み出すきっかけになっている。ユニクロの小型バッグは、関連動画が累計で5900万回以上再生されたことをきっかけにユニクロ史上で最も売れた。TikTokは新たな消費の潮流として定着しつつある。

短尺動画SNS「TikTok」の動画をきっかけに商品が売れる「TikTok売れ」という現象は3つの理由で起きる(写真/Shutterstock)
短尺動画SNS「TikTok」の動画をきっかけに商品が売れる「TikTok売れ」という現象は3つの理由で起きる(写真/Shutterstock)

 ユニクロ史上、最も売れたバッグ。そのきっかけをつくったのはTikTokだった――。

 ユニクロの「ラウンドミニショルダーバッグ」はサイズが28センチ×17センチのバナナ型で、サイズは小さめながら、たくさんのものが入る大容量であることが売り。価格は1500円(税込み)と手ごろで買いやすい。同商品が欧州を中心に爆発的に売れている。ユニクロによれば、ラウンドミニは発売以来18カ月で7回も売り切れたという。

 ヒットのきっかけとなったのは、英国のある消費者がTikTokに投稿したバッグの紹介動画だ。ビスケット、財布、カギ、スマートフォンの充電器、大きめのヘッドホン、カメラなどを次々と取り出す43秒の短い動画の再生回数は80万回を超えている。

 多くのTikTok利用者がこの動画をまねて、「小さいのに、こんなにたくさんモノが入る」という動画を投稿した。同商品にまつわる動画の再生回数は、累計で5900万回を超えている。これによりラウンドミニショルダーバッグは、世界的なヒットとなった。

ユニクロの「ラウンドミニショルダーバッグ」はTikTokで人気に火が付き、大ヒット商品となった
ユニクロの「ラウンドミニショルダーバッグ」はTikTokで人気に火が付き、大ヒット商品となった

 「まねる」動画が増える理由は、一度トレンドになれば再生回数が伸びやすくなるからだ。TikTok利用者の多くは、TikTokが機械的に利用者に合った動画をレコメンドする「おすすめ」に流れてくる動画を視聴している。話題になっている動画ほど、おすすめに載りやすくなるため、トレンドがもたらす価値は利用者と企業の双方に大きい。

 フォロワー数が多いからといって、再生回数が伸びないのはTikTokの特徴だ。TikTokは1人のインフルエンサーより、複数の利用者によるUGC(ユーザー生成コンテンツ)で連鎖的に同じテーマの動画が投稿され、トレンドが生まれるほうが波及効果は大きい。ユニクロのバッグは、TikTok発のトレンドが大きな消費を生み出した事例だ。

 TikTokのトレンドをつくろうと試みる企業も登場している。カネボウ化粧品の口紅「ケイト リップモンスター」は、商品開発の段階から「いかにデジタル上でバズらせるか」を意識したという。色味を表すのに「欲望の塊」「2:00AM」「ラスボス」「水晶玉のマダム」など独特のネーミングを採用している。

 TikTokで音楽に合わせてリップの色が変化し、「欲望の塊」などの色味のキャッチコピーが次々と登場するPR動画が人気になると、まねた動画を投稿する消費者が続出。発売から約10カ月で、「ケイト リップモンスター」は累計240万本を出荷するヒット商品になった。

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「TikTok売れ」が起きる3つの理由

 なぜTikTok売れは起こるのか。フォロワー2000万人超のTikTokクリエイターであるバヤシ氏は、「バズった音源はユーザーが飽きるまで流れ続ける。接触回数が多くなるから、(商品がその音楽に乗って流れていると)だんだん気になってくるし、買いたくなりやすい」と言う。TikTok売れが起こる要因の1つは「接触回数が圧倒的に多い点が大きい」ことだと指摘している。

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