※日経エンタテインメント! 2023年1月号の記事を再構成

2021年11月3日のデビューから、瞬く間に日本のトップボーイズグループに駆け上がったINI(アイエヌアイ)。デビューから1年間でリリースしたシングルはハーフミリオン超えを連発し、大きな衝撃をもたらした。だが、彼らのヒストリーは動き始めたばかり。この1年の喜怒哀楽と努力と経験が、23年の彼らを大きく前に進める。

(写真/上野裕二 スタイリスト/都甲真名美 ヘアメイク/時田ユースケ[ECLAT])
(写真/上野裕二 スタイリスト/都甲真名美 ヘアメイク/時田ユースケ[ECLAT])
INI(アイエヌアイ)
前列左から田島将吾(たじま・しょうご/1998年10月13日生まれ、東京都出身)、佐野雄大(さの・ゆうだい/2000年10月10日生まれ、大阪府出身)、後藤威尊(ごとう・たける/1999年6月3日生まれ、大阪府出身)、許 豊凡(しゅう・ふぇんふぁん/1998年6月12日生まれ、中国出身)、池﨑理人(いけざき・りひと/2001年8月30日生まれ、福岡県出身)
後列左から西 洸人(にし・ひろと/1997年6月1日生まれ、鹿児島県出身)、藤牧京介(ふじまき・きょうすけ/1999年8月10日生まれ、長野県出身)、髙塚大夢(たかつか・ひろむ/1999年4月4日生まれ、東京都出身)、尾崎匠海(おざき・たくみ/1999年6月14日生まれ、大阪府出身)、松田 迅(まつだ・じん/2002年10月30日生まれ、沖縄県出身)、木村柾哉(きむら・まさや/1997年10月10日生まれ、愛知県出身)

 INIにとって、デビューからの1年は輝かしい成績を残しただけでなく、2年目の飛躍への経験を多く蓄えた年になった。

 サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』を経て、2021年11月3日にリリースしたDEBUT SINGLE『A』は初週売上50.8万枚を記録。デビューシングル初週売上で、歴代5位の記録を打ち立てた(当時/Billboardチャートでは48.9万枚)。世界最大級のアジア音楽授賞式「2021 MAMA(Mnet ASIAN MUSIC AWARDS)」では「Favorite Asian Artist」を、「第63回輝く! 日本レコード大賞」では新人賞を受賞した。

『A』/48.9万枚/Wタイトルは『Rocketeer』『Brighter』。通常盤ではほかに『Cardio』『KILLING PART』を収録。オリコンではハーフミリオンを突破した
『A』/48.9万枚
Wタイトル曲は『Rocketeer』『Brighter』。通常盤ではほかに『Cardio』『KILLING PART』を収録。オリコンではハーフミリオンを突破した

 11月には初の有観客ファンミーティングも開催し、MINI(INIのファンネーム)に直接会う経験をした。これは大半のメンバーが「3大ニュース」に挙げている(メンバーの3大ニュースは記事末参照)。「たくさんのMINIの皆さんとペンライトの海を初めて目の前にして、これからも絶対忘れない出来事だと思う」(後藤威尊)、「ずっと待っていてくれたMINIにやっと会えたっていう気持ちもありますし、あの幕が上がった瞬間の光景はちょっと忘れられない」(藤牧京介)。

 幸先のいいスタートダッシュのように思えたが、実は「3大ニュース」に「第63回輝く! 日本レコード大賞」が多く挙がったのは、必ずしもプラスの感情ではない。佐野雄大は「チームが団結して気合いの入ったパフォーマンスをしたぶん、最優秀新人賞を逃したことを全員が悔しがっていた。この光景は絶対に忘れないだろうと感じた」と振り返る。ここでの経験が、22年のINIのチーム力とスキルをより一層伸ばしたのではないかと思われる。

米国などグローバルへの展開

 22年4月に待望の2ND SINGLE『I』をリリースすると、前作比約24万枚増の74.2万枚を記録。さらに8月の3RD SINGLE『M』では73.7万枚と数字をほぼ落とすことなくキープ(以上、数字はBillboardチャート)。コアなファン層が拡大、定着したことを感じさせたとともに、押しも押されもせぬ日本のトップクラスのボーイズグループとしての地位をつかんだ。

『I』/74.2万枚/活動曲は『CALL 119』『We Are』。通常盤ではほか『AMAZE ME』『BOMBARDA』を、初回限定盤A・Bでは『DILEMMA』『Polaroid』をそれぞれ収録
『I』/74.2万枚
Wタイトル曲は『CALL 119』『We Are』。通常盤ではほか『AMAZE ME』『BOMBARDA』を、初回限定盤A・Bでは『DILEMMA』『Polaroid』をそれぞれ収録
『M』/73.7万枚/タイトル曲は『Password』。通常盤ではほか『STRIDE』『Mirror』『Shooting Star』を収録。初回限定盤A・BはそれぞれDVD付き
『M』/73.7万枚
タイトル曲は『Password』。通常盤ではほか『STRIDE』『Mirror』『Shooting Star』を収録。初回限定盤A・BはそれぞれDVD付き

 5月の「KCON 2022 Premiere」日本公演を経て、8月には初の有観客海外パフォーマンスとなる「KCON 2022 LA」、10月には「KCON 2022 JAPAN」と、韓国CJ ENM主催のグローバルイベントに出演。こうした機会も、吉本興業とCJ ENMの合弁企業である所属事務所LAPONEエンタテインメントが持つ強みと言えるだろう。

 特に「KCON 2022 LA」でStray KidsらK-POPのトップクラスのアーティストとステージを共にした経験が大きな刺激となった。「ステージに立つ楽しさもあり、反省点や課題点も見つかった。好きだったアーティストさんを生で見ることができて本当に上手だなと感じた日でした」(池﨑理人)、「2日目は客席からステージを見て、本当に刺激をもらったし、悔しさも感じました。会場の盛り上がりもそうだし、パフォーマンスのレベルもすごいなって。客観的にステージを見るのは大事だなと思った出来事でした」(田島将吾)。

 とは言うものの、LA公演での反響は熱く、出演後のSpotifyでの新規リスナー数は、USで約3週間にわたり毎日1万人以上増加(日本国内は7万前後/数字はChartmetricより)。見出されるチャンスがあれば「届く」手応えを感じるものとなった。

 現在のINI Official YouTubeチャンネル登録者の分布を見ると、日本国内が半数近くを占めるものの、インドネシアと米国が8%以上、次いでタイ、ブラジル、フランス、韓国、フィリピンが続くなど、既存のK-POPファンへのアプローチも見て取れる。直近では「MAMA AWARDS」での反響も期待できるところだ。

 これまでのシングルのタイトル曲になった『Rocketeer』『CALL 119』『Password』は、全てヒップホップジャンルのダンス曲。高いボーカル力も評価されてはいるが、難易度の高いダンスパフォーマンスのグループという認識が浸透していると思われる。そのなかで、ダンスを封印したWANIMA提供の『HERO』は、新たなINIの可能性を広げた曲だった。9月開催の「WANIMA presents 1CHANCE FESTIVAL 2022」で披露した『HERO』がYouTubeで公開されているが、“踊らない”エモーショナルなステージを見せている。

 本人たちにとっては、初めてハンドマイクでステージに立つ経験そのものが強烈な感覚を残したようだ。「ステージを楽しむ感覚やバンドならではの空気感など、新しい感覚を獲得できた」(尾崎匠海)、「ハンドマイクでの作り込んだパフォーマンスは初めてで、新しい自分を見せられた感覚があった」(髙塚大夢)と振り返る。

 まだ2年目に突入したばかり。「INIらしさ」を固定することなく、今後も様々な表現が見られるのではないだろうか。

2年目、さらなる人気拡大へ

 CDセールスでは圧倒的な強さを見せるINIだが、SNSフォロワー数やYouTubeのMV(ミュージックビデオ)再生回数、新曲リリース時のSpotify月間リスナー数などの数値を見ると、まだまだ今後の伸びしろはいくらでもあると考えられる。何か1つのファクターで爆発的に認知度が上がることを期待するのではなく、国内外へのイベントへの出演、音楽番組やドラマへの出演などの様々なチャンスに対して積極的に取り組み続けることで、より強固で大きなファンダムを築ける可能性は大きい。

 22年秋からは、尾崎がドラマ『コンビニ★ヒーローズ~あなたのSOS、いただきました!!~』に、木村、髙塚、田島、松田、藤牧がドラマ『君の花になる』に出演し、髙塚は単独で「MTV VMAJ 2022 -THE LIVE-」のステージに立つなど、グループを離れた活動も目につく。これまでもバラエティ番組や情報番組などにメンバーが単独あるいは少数で出演することはあったが、より本格的な形での露出が広がっている。こうした取り組みも今後に向けて必要なことだ。

 12月には、1ST ALBUM『Awakening』のリリースと、初のアリーナツアー「2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR[BREAK THE CODE]」を開催。ツアーでは全国12万人を動員した。

 『Awakening』でも様々な新しい表現に取り組むINIが見られる。田島と西がそれぞれ作詞でクリエーティブに参加したことも、今後のグループの意識に刺激をもたらすだろう。続くアリーナツアーでは経験する全てが、INIを大きく成長させるに違いなく、23年に彼らがどのように輝きを増すのか、今から楽しみだ。

 LAPONEエンタテインメントのチェ・シンファ社長が語るように(日経エンタテインメント!2023年1月号13ページ参照)、今、INIは「数字の実績」だけにとらわれない経験を重ねるべき時にある。その積み重ねが、彼らをさらに上へ押し上げることだろう。

(※記事内の売上に関する数字はBillboard JAPAN調べ)
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