既刊10巻で累計発行部数2900万部超(電子書籍含む)を誇る、遠藤達哉によるスパイアクション&ホームコメディ『SPY×FAMILY』(集英社)が、コミックス売り上げ部数3位、動画配信ランキング1位、音楽3位など2022年の各種ランキングを席巻している。オリコンによる総合シリーズ別ランキング(音楽、映像、書籍)でも、社会的ヒットコンテンツの『呪術廻戦』や『ONE PIECE』と並んで総合2位に入った。
世界の平和のためにスパイになった男、コードネーム〈黄昏〉が、ミッション遂行のために精神科医のロイド・フォージャーとして、超能力者の少女アーニャと「いばら姫」の異名を持つ殺し屋のヨルと互いの正体を隠したまま“仮初めの家族”を築く。緊迫した任務と慣れない夫業&父親業に励む姿を、シリアスに、時にコミカルに描くストーリー。ヨルの弟のユーリや、フォージャー家の4番目の家族となる予知能力を持つ大型犬のボンド、アーニャが通うイーデン校のクラスメートでロイドの標的の息子であるダミアンなど、脇を固めるキャラクターも魅力的な面々がずらり。
19年3月にマンガアプリ『少年ジャンプ+』で連載が始まると、その面白さはすぐさま拡散され、同アプリの閲覧数やコメント数の最高記録を更新。無料で読めるにもかかわらず、マンガの売り上げも6巻で初版100万部の大台に乗せるなど異例の推移を見せ、現在次々とヒット作を生み出している『少年ジャンプ+』躍進の契機に。
そして、人気は22年4月のテレビアニメ化によってさらに拡大。22年を象徴する作品となった。
アニメーション制作は、『進撃の巨人Season1~3』のWIT STUDIOと、『Fate/ Grand Order-絶対魔獣戦線バビロニア-』のCloverWorksというヒットアニメを多数生み出す2社の強力タッグ。監督、シリーズ構成にはベテランの古橋一浩(『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』『機動戦士ガンダムUC』)を据え、物語、芝居、映像、音楽など、全てにおいてクオリティーの高い映像表現を実現した。
特に、アニメだからこその動きと声を担う種崎敦美の神演技によって、アーニャの魅力が爆発。他人の心が読める超能力を駆使してロイドの役に立とうと頑張ったり、ロイドとヨルの仲を取り持ってみたり。子どもらしいかわいさと天真爛漫さで、老若男女の心をがっちりとつかんだ。
アーニャの魅力は世界共通
テレビアニメを放送するテレビ東京では、リアルタイム視聴率が最高2.2%(個人全体、以下同)と好調で、さらに第2クールの第1話のタイムシフト視聴率は6.0%と、7月クール以降の全局全番組で最高を記録(関東地区、ビデオリサーチ調べ。22年11月9日時点)。配信は40近いサービスで行われ、そのうち定額制では、韓流なども含めた全ジャンルで1位だ。
第1期オープニングテーマのOfficial髭男dism書き下ろし『ミックスナッツ』は、オリコン初登場1位、Billboardのダウンロード&ストリーミングチャートでも複数回にわたり1位を獲得。ストリーミング再生数は2億回を超えている。
近年マンガやアニメ作品とのキャンペーンや商品化が活発に行われているが、『SPY×FAMILY』もユニクロ、しまむら、ローソン、PRONTOなど多種多様な施策を展開。キャラクターの姿を街で見かけない日はないほどの引っ張りだこな状態だ。こうした反響が原作にも返ってくる、好循環を生んでいる。
「アニメ化前から初版100万部超え、毎週100万閲覧を超えていたタイトルでしたので、既に届けられる人には届き切っているのかも、と思っておりましたが、アニメを開始して、閲覧数、部数ともに2倍近く伸び、より多くの世代、多くの方々に強く響いたので、とてもびっくりしました。高いクオリティーのアニメ、宣伝・商品化・コラボ等、SPYのアニメチームの総力が、しっかり世界に届いたがゆえと感謝しております」(担当編集の林士平氏)
世界にもその面白さは広がっている。欧米地域を中心に配信するクランチロールでは英語版やスペイン語版など多様な言語で公式ツイッターやインスタグラムを運営。多くのファンがフォローしている。
テレビアニメ第2クールは22年12月末で最終回を迎えたが、『少年ジャンプ+』で連載中のマンガもますますパワーアップ。23年3月には、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』などを手掛けたG2の脚本、演出によって、森崎ウィン&鈴木拡樹主演(Wキャスト)でミュージカルが帝国劇場他で上演されることも決定。『SPY×FAMILY』ワールドは広がり続ける。