※日経エンタテインメント! 2023年1月号の記事を再構成

2022年の音楽チャートを見ると、アニメ作品のタイアップ曲やTikTok発のヒット曲が多かった。ジャンルではバンド勢の活躍が目立ち、ボーイズグループもCDセールスで強さを発揮した。

Billboard JAPAN HOT100 年間ランキングTOP20/Billboard JAPAN調べ。集計期間は21年12月27日~22年11月6日。各項目の表記は、R=ラジオ、SL=セールス、(CD、DL=ダウンロード、STR=ストリーミング)、LU=ルックアップ、TW=ツイッター、MV=ミュージックビデオ、K=カラオケ。数字は順位
Billboard JAPAN調べ。集計期間は21年12月27日~22年11月6日。各項目の表記は、R=ラジオ、SL=セールス、(CD、DL=ダウンロード、STR=ストリーミング)、LU=ルックアップ、TW=ツイッター、MV=ミュージックビデオ、K=カラオケ。数字は順位

 「Billboard JAPAN HOT100」の年間ランキング1位は、女性ソロシンガーAimerが歌うアニメ『鬼滅の刃』主題歌の『残響散歌』。ストリーミングに特化したヒット曲が多いなかで本作は、CD、ダウンロード、ストリーミングの3部門でバランスよくヒットした。トップ20の中では唯一CDの売上枚数が10万枚を超え、ダウンロードは過去1年間に発表された中で唯一50万を突破(日本レコード協会調べ)し年間1位、さらにストリーミングも2億回を超え年間5位に。

 このバランス型ヒットの傾向は、『鬼滅の刃』の前シリーズ『紅蓮華』、劇場版『炎』(いずれもLiSAが担当)と全く同じ。圧倒的な世界観を持ったアニメのタイアップ曲は、今後も幅広い世代に支持される形でヒットする可能性が大きい。

 2位はシンガーソングライターTani Yuukiの『W/X/Y』。4月からほぼ毎月のように週間トップ10入り。特にストリーミングでの人気が圧倒的で、累計再生数3億回突破も確実だ。R&Bテイストの効き心地の良い歌声に加え、“W/X/Y”の手ぶりを取り入れた関連動画がTikTokで大きくバズって累計再生数は10億回を突破する。この“億超え”ヒットの話題性から様々な音楽番組や情報番組に取り上げられ、何度もチャートの再浮上を繰り返すロングヒットとなった。

 9位のSEKAI NO OWARIHabit』も、奇妙なダンスが話題となりTikTokでの再生数が10億回を突破している。数多くのTikTok発のヒットの中で、この2曲が上位入りしているのは、ストリーミングやMV(ミュージックビデオ)がトップ10級の再生数となっているため。決して“出落ち”にならずに、曲を通して聴くリスナーも多いからだ。

 また21年に大ブレイクを果たした優里も『ベテルギウス』(4位)、『ドライフラワー』(7位)の2作がヒットを継続し、ともにトップ10に入った。

サウシー、マカえんが上昇

 22年は、バンドも多数ランクインした。ともに19年に大ブレイクを果たしたOfficial髭男dismKing Gnuが、それぞれ『SPY×FAMILY』と『呪術廻戦』のアニメのタイアップ曲で22年も上位入り。今や、人気バンドとアニメのコラボレーションは珍しくなくなった。むしろ、日本のアニメの国際的な人気を考えれば、今後ますます活発になりそうだ。

 男女混成の3人組バンドSaucy Dogの『シンデレラボーイ』(5位)と、男性4人組バンドであるマカロニえんぴつの『なんでもないよ、』(8位)も上位に。どちらも、ストリーミングやカラオケが強く、ボーカルの親しみやすいキャラクターもSNSと親和性が強い。2組とも既に日本武道館で単独ライブを成功させているが、22年のCDアルバムは累計1万~2万枚。よりコアなファンやより幅広い年齢層への浸透が、さらなるブレイクのカギと言える。

ストリーミング 年間ランキングTOP10/集計期間は21年12月27日~22年11月6日。「2022年オリコン年間ランキング」の集計期間とは異なる
データ提供:オリコン(oricon.co.jp)。集計期間は21年12月27日~22年11月6日。「2022年オリコン年間ランキング」の集計期間とは異なる

Snow ManがCD2冠

 CDシングルチャートを見ると、Snow Manが2年連続首位となり、トップ10内のジャニーズ勢はSnow Manが1位と2位、なにわ男子が8位、King & Princeが9位と、こちらも21年に引き続き半数近くを占めた。

CDシングルセールス 年間ランキングTOP10/サウンドスキャン調べ。集計期間は21年12月27日~22年11月6日
サウンドスキャン調べ。集計期間は21年12月27日~22年11月6日

 彼らの大半は、ストリーミングを解禁していないため、ビルボードの年間で上位になることは難しいが、確実にコアなファンを保持している。さらに、ここ数年CDシングルの上位はジャニーズ勢、坂道シリーズ、48グループがほぼ独占していたが、22年は、INIが4位と5位、JO1が10位と「PRODUCE 101 JAPAN」発のグループから3作がランクイン。デビュー前からファンが自主的に応援広告を出すなど、ファンの“推し”への愛の強さが如実に出るのはCDシングルならではだ。

 アルバムチャートを見ると、トップ20のうち11作品がボーイズグループのものとなった。内訳を見ると、ジャニーズ勢がSnow Man、なにわ男子、SixTONES、King & Prince、ジャニーズWESTで計5作、K-POP勢がBTSSEVENTEEN2作、ENHYPENで計4作と、K-POP勢がジャニーズに次ぐ勢力となっている。

Billboard JAPAN 年間アルバムランキングTOP20/Billboad JAPAN調べ。集計期間は21年12月27日~22年11月6日
Billboad JAPAN調べ。集計期間は21年12月27日~22年11月6日

 また、20位に『BE:1』が入った、SKY-HIプロデュースの7人組BE:FIRSTは、ボーイズグループの中でも、BTSのようにCDセールスだけでなく配信でもチャート上位につけており、楽曲人気の高さも窺わせる。

 22年は、アルバムでもデビューから3年以内の新人アーティストが健闘した。2位のなにわ男子、8位のAdo、19位の優里、20位のBE:FIRSTと、1stアルバムが4作もランクイン。なかでも女性ソロシンガーのAdoは、トップ10内に2作が入った。

 特に、映画『ONE PIECE FILM RED』内の歌唱曲を集めた『ウタの歌』は、総合6位の『新時代』など収録曲のうち4曲が2カ月間トップ4を独占したり、米ビルボードでもトップ10入り。Adoは『うっせえわ』がヒットした21年以上の活躍を見せている。10月には海外レーベルとの契約も締結し、23年以降はグローバルな活躍も期待される。

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