※日経エンタテインメント! 2023年1月号の記事を再構成
2022年、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の畠山重忠役で反響を呼んだ中川大志。TBSの『オールドルーキー』や福田雄一監督の映画『ブラックナイトパレード』にも出演し、舞台『歌妖曲~中川大志之丞変化~』では“座長”も務めた。『鎌倉殿の13人』について聞いた前編に続き、後編ではそれらの作品についてや初監督を務めたWOWOW『アクターズ・ショート・フィルム3』の話を聞いた。
『鎌倉殿の13人』と並行して撮影に挑んだのが、7月期にTBSの「日曜劇場」で放送された『オールドルーキー』だ。演じたのは、スポーツ選手のマネジメント会社で働く、ムードメーカー的若手社員の城拓也。小栗と同い年で、共に日本のエンタテインメントをけん引してきた綾野剛と共演した。そして11月からは舞台に初挑戦。明治座、東宝、ヴィレッヂという演劇大手が組んだ「三銃士企画」の第2弾『歌妖曲~中川大志之丞変化~』で座長を務めた。
日曜劇場って、大人の枠というイメージがあって。10代の頃に「いつか出たいな」と憧れを持っていたので、この年になって出演できて、うれしかったです。
綾野さんと初めて共演できるっていうのも大きかったですね。綾野さんも、小栗さんのように、常に一線で戦ってきた方。あれだけの人たちでも、まだまだ、現場で戦っているんです。どうやったら作品をより良くできるか、ものすごく真摯に取り組んでいる。並行してお2人の背中を見ることができて、僕ら下の世代も、もっと気合いを入れていかないとダメだなと、刺激をもらいました。
舞台は、10代のときから「いつかやりたい」と言い続けてきたので、念願かなったという感じです。明治座、東宝、ヴィレッヂの3社の企画は、第1弾を客席で見て、面白いと思っていたんです。その第2弾に自分が出させてもらえるのはとても光栄で、うれしさも特別なものがありましたね。
もうすぐ本番ですが(取材は2022年11月初旬)、実験的な部分もけっこうあって、楽しいです。新しいチャレンジをさせてもらえて、本当にありがたいと思います。
福田作品ではチャラ男に
そして、20年の『親バカ青春白書』以来、2度目の福田雄一作品となる映画『ブラックナイトパレード』が22年12月23日に公開された。北極にあるサンタクロースの会社に就職した主人公・三春(吉沢亮)の元同僚で、とにかくチャラい田中皇帝(カイザー)にふんする。
原作マンガと台本を読ませていただいたら、すごく自分の好きな世界観で。入口は日常的ですが、そこから180度違う、ファンタジーの世界に飛んでいく。現実と非現実が隣り合わせの世界観や、クリスマス特有の華やかさやワクワク感などが詰まっていて、映像化が純粋に楽しみだと思いました。
一方で、カイザーっていうキャラクターが、ものすごく強烈で(笑)。ここまでテンションの高い役は、そんなにやってこなかったので、「自分にできるかな?」というプレッシャーはありましたね。
この役でテーマにしたのは、ウザさです(笑)。大事なのは、三春をどれだけイライラさせられるかだと思ったので、福田さんに演出をもらいながら、無駄な動きや余計な言葉を随所に入れています。
カイザーが教壇に立つという場面では、「最初のツカミで、いろいろやってみて」と福田さんに言われたので、アドリブでいろんなことをやりました。…いやぁ、怖いですよ(笑)。現場でウケるか分からないし、リハーサルなしでいきなり本番にいくこともあるので、そこで出し切れるかという緊張感もあるし。相当なプレッシャーで、クランクインするまで、1週間くらい寝られなかったです(笑)。
撮影は夏で、また大河ドラマとかぶっていたんです。1日のなかで、畠山をやった後に、カイザーをやる、みたいな日もあったので、切り替えが大変でした。それを乗り越えるためにしたことは…寝る(笑)。5分でも眠るとリセットできて、自然に切り替わるんです。あと、カイザーに入るときは音楽を聴いて、テンションを上げました。何の曲かは、秘密です(笑)。
終わったときは、普段自分が使わないエネルギーを使うので、ぐったりでした。でも、自分にとって、チャレンジングな役。お客さんも新鮮だと思いますし、畠山で僕を知った人には、良い意味で驚いてもらえたらうれしいですね。
23年は監督にも挑む
大河、日曜劇場、大舞台に福田作品と、日本のエンタテインメントの最前線で活躍を見せた、22年の中川。23年は、北村匠海とダブル主演する映画『スクロール』が2月に公開され、短編の監督に挑んだWOWOW『アクターズ・ショート・フィルム3』(2月11日/20時)の放送・配信も控える。
監督にはもともと興味があって、学生のときに遊びで撮ったりもしてたんです。たぶん、そのような記事を見てくださったのか、WOWOWのチームが、声を掛けてくださって。もう撮影を終えて仕上げ中なんですが、また新しいチャレンジができて貴重な経験になりましたし、監督側から役者を見ることで、発見することもたくさんありました。
僕の原動力になっているのは、「エンタテインメントを作って、お客さんに届けることが好き」という思いです。子どものときから、人を驚かせたり、楽しませたりすることに喜びを感じていたので、その延長線上で今もやっているという感じなんです。その作って届けるという作業が、規模が大きかろうが小さかろうが、純粋に楽しい。だから、俳優としてじゃなくても関わっていきたいと思いますね。このエンタテインメントを作るという仕事には。
23年は25歳となり、20代後半に突入する。どんな役柄を演じ、どんな俳優を目指していくのか。
25歳…早いですね。ついこのあいだ20代になったような気がするので。たぶんこのまま、あっという間に30代に向けて…ということになってくるんじゃないかな。
役柄としては、10代のときにできなかった大人の役がちょっとずつ増えてきたので、そこからまた30歳に向けて、男臭い役とか、アダルティーな役をやっていきたいです(笑)。同性から支持してもらえるような、そういう作品にも出合えたらうれしいですね。
大河の主演も、目標の1つです。常に目標を持ちながら進んで、やりたいと思う限りは、この仕事を続けられたらと思っています。
(写真/橋本勝美 スタイリスト/徳永貴士[SOT] ヘアメイク/池上 豪[NICOLASHKA])