※日経エンタテインメント! 2023年1月号の記事を再構成

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の畠山重忠役で反響を呼び、TBSの『オールドルーキー』や福田雄一監督の映画『ブラックナイトパレード』にも出演。さらに大舞台で“座長”も務めて飛躍した中川大志。自身のテーマや先輩の背中から学んだもの、子どもの頃から変わらないという仕事の原動力とは。

2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で畠山重忠を演じた中川大志
2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で畠山重忠を演じた中川大志

 2011年、13歳のときに出演した『家政婦のミタ』の長男役で注目をされ、数々の青春モノに主演して10代を駆け抜けた中川大志。20代に入ってからは、NHKの連続テレビ小説『なつぞら』(19年)でヒロインの夫となる坂場一久を演じて幅広いファンを獲得。21年には『ボクの殺意が恋をした』(ytv・日テレ系)でGP帯(19時~23時)の連ドラに初主演を果たした。二枚目だけでなく、auのCMでの「細杉くん」や、『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK総合)などで見せたコミカルな演技でも人気を得ている。

 24歳になった22年は、TBSの『オールドルーキー』や福田雄一監督の映画『ブラックナイトパレード』に出演。舞台の座長も務め、八面六臂の活躍を見せた。なかでも注目されたのが、三谷幸喜脚本のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』だ。智勇兼備で「武士の鑑」と謳われた畠山重忠を演じ、幅広い層の心をつかんだ。

役を愛して、支持してもらえる幸せ

 22年はやっぱり、『鎌倉殿の13人』が大きかったですね。ものすごく反響をいただいて、初めて僕のことを知ったと言ってくださる方も、たくさんいたので。現場でも、行くところ行くところで、「見てます」と話題になって、業界内視聴率もすごかったです(笑)。

 畠山重忠という役をいただいたときは、ここまで大きな反応が得られるとは、想像もしてなかったです。特に教科書で習うような人物じゃなく、僕も最初、名前を聞いてもピンと来なかったので。そういう人物を、いろんな人に知ってもらえて、愛していただけた。感想もね、僕がうんぬんじゃないんですよ。みなさん、畠山と一緒に悲しんだり、喜んだりしていて。作品にのめりこんで、こんなに役を愛して、支持してもらえるっていうのは、役者としては何よりの幸せだなと改めて思いました。

 中川の大河ドラマ出演は、『江~姫たちの戦国~』(11年)、『平清盛』(12年)、『真田丸』(16年)以来の4作目。三谷脚本作は、『真田丸』に続く2作目となる。鎌倉幕府二代執権となる主役の北条義時を演じたのは、小栗旬だ。

 『真田丸』が終わったときに、三谷さんと電話とメールでやり取りをさせてもらって、「またいつかご一緒したいです。頑張ります」というようなお話をしていたので、6年たって、また三谷さんの大河に出られてうれしかったです。かつ、自分も大好きで、いつか一緒にお芝居をしたいと思っていた小栗さんをはじめ、初めてご一緒する先輩方と一緒の船に乗れるのは、すごく光栄なことだと思いました。

小栗旬から感じた“強さ”

 僕は毎回、作品に入るたびに、「今回は、これにチャレンジしよう」というようなテーマを決めるんです。『鎌倉殿』で大きかったのは、空気に飲まれないこと。今回、4度目の大河ですが、まだまだ自分は1番若い立場で、周りは先輩ばかり。しかも大河には、ほかの作品にはない異様な空気感があるので、その空気に飲まれず、どれだけ戦い抜けるかをテーマにしていました。それは、畠山重忠が、そういう人物だからです。彼は口数も多くないし、あまり人の先頭に立つタイプではないですが、目上だろうが、どんな立場の人であろうが、常に堂々と渡り合っていく。だから僕も、どれだけ先輩がいようが負けない、飲まれないことを意識しようと思ったんです。

 それを貫けたか、ですか(笑)。どんな現場でも、全部が全部うまくいくことはないので、反省点や悔しい点は、いくらでもあります。でも、役者として、大きな収穫がたくさんあった現場でした。

 その1つは、やはり小栗さんとの共演です。小栗さんは誰よりも作品のことを考えていて、時にはみんなの矢面に立って、作品のために戦ってくださる。自分がこの世界に入る前から一線に立ち続けて、ずっと重責を背負ってきた人ならではの“強さ”を感じました。

 とはいえ、小栗さん自身はものすごく柔らかい人なので、現場がピリピリするようなことは全くなくて。常に共演者やスタッフを気遣って、人と人をつないでいく。小栗さんが家族みたいな結束力のチームを作ってくれたから、多くの人に熱狂的に受け入れられるような、上質で面白い作品を送り届けられたのかなと思います。一致団結する強さは、並大抵のものではなかったですから。真ん中に立つ人として、本当に尊敬しました。

 そして言わずもがなですが、演技の面でもリスペクトというか、一緒にお芝居をしていて、本当に楽しくて。まあ、最後にあんなタイマンを張ることになるとは、思ってもいませんでしたが(笑)。

 畠山にとってのクライマックスは、義時に追われ、拳を交える最期の場面。放送終了後は、「魂の名演」「大河史上に残る殴り合い」などとSNSで話題になり、“畠山ロス”が拡散した。中川に対しては、「ぜひ大河の主役へ飛躍して欲しい」「早く彼に合う役を探して」といった声が多く上がった。

 台本には「一騎打ち」とだけ書いてあったんです。それを、どういう一騎打ちにしようかと演出陣、アクションチーム、そして小栗さんと話し合って。幼なじみのような2人なので、キレイな立ち回りじゃなくて、子どものケンカのような、泥臭い感じがいいんじゃないかっていう話になりました。

 ありがたいことに、僕のクランクアップがその場面だったので、思い切りやって、実際に拳が当たったり、当たってなかったり(笑)。終わったときはもう満身創痍で、やり切ったという感じでした。過去に朝ドラもやらせてもらいましたが、ここまで長い期間演じたのは畠山が初めて。終わった瞬間は、やはり寂しさもありました。


 後編「僕の原動力は『作って届けることがスキ』という思い」では、『鎌倉殿の13人』と並行して撮影にのぞんだドラマ『オールドルーキー』と映画『ブラックナイトパレード』、そして初監督に挑戦したWOWOWで2月放送予定の『アクターズ・ショート・フィルム3』について話を聞く。

中川大志(なかがわ・たいし)
1998年6月14日生まれ、東京都出身。小学4年生の時にスカウトされ、2009年に俳優デビュー。19年、映画『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』の演技により、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。文中以外の出演ドラマに『南くんの恋人~my little lover』(15年)、『花のち晴れ~花男 Next Season~』(18年)、『G線上のあなたと私』(19年)など。主演映画に『ReLIFE リライフ』(17年)、『虹色デイズ』(18年)、『砕け散るところを見せてあげる』(21年)、『FUNNY BUNNY』(21年)などがある

(写真/橋本勝美 スタイリスト/徳永貴士[SOT] ヘアメイク/池上 豪[NICOLASHKA])

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